今年は米中関係にとって節目の年だ。米国ではオバマ大統領の2期目が始まり、中国共産党の習近平総書記が国家主席に就任する。米中の政権開始時期が重なるのは20年ぶりだ。次の20年、「パックス・アメリカーナ(米国主導の平和)」の時代が終わりに向かうとも指摘される米国と、高成長を続けても内政に矛盾を抱えた中国は、どう向き合うのか。米国を代表する中国専門家、外交問題評議会(CFR)のエリザベス・エコノミー氏に米中関係の将来を聞いた。(ニューヨーク駐在編集委員 松浦肇)
--米国家情報会議(NIC)が、2030年の世界情勢を予測した報告書を発表し、米国の影響力が相対的に低下する一方、中国が世界最大の経済大国となる、と予想しました
「中国は10年以内に世界最大の経済大国となるだろうが、絶対的な力になるわけではない。一人当たりの国内総生産(GDP)はまだまだ低く、途上国の側面がある。世界のリーダーとなるには、決意、能力と普遍的な価値観が必要だ。米国は3つの資格すべてを備えているが、中国には能力はあっても他国を引っ張るという価値観がない」
「中国の同盟国は、北朝鮮と強いて言えばジンバブエぐらい。国の規模がリーダーとしてのデファクト・スタンダード(事実上の世界標準)になるわけではない」
--中国が米国と並ぶ世界のリーダーとなれない具体的な理由は
「まずは外交。経済面での影響力は高まっているのに、環境や通商など世界的な課題を解決するという意気込みに欠け、建設的なリーダーシップをとる準備ができていない。人材がまだ育っておらず、外交官や専門家の数が限られている」
--米国が主導する世界秩序の「フリーライダー」(ただ乗り)なのですか
「そうだろうが、これは他の国だって同じ。中国の問題は、世界への影響が大きくなりすぎたにもかかわらず、他国と競争し、ビジネス展開して自分の利権を拡大することしか考えていない点にある」
「例えば、中国は国際通貨基金(IMF)で自国の議決権を拡大しようとしているが、そのIMFが政府間融資の透明性を求めているのに、(汚職の多い)アンゴラやジンバブエなど国への融資を抱えている」
--なるほど…
「虐殺に関与している政府とのビジネスを敢行する。シリアや北朝鮮問題では交渉のテーブルにはのっても、自ら主導して事態収拾するという意識が低い。世界の警察官になるためにはコストもかかるし、リスクもあるが、その心構えがあるのは米国だけだ」
--海外での資源獲得にも躍起ですが
「米国が(石油や天然ガスの増産によって)エネルギー面で自立するという動きに対して、中国は不安を持っている。中国は中東からの原油輸入に依存しており、米国の中東への関与が低下し、地域の安定が損なわれることは困るからだ。中国は資源へのアクセスはどうなるのか、という自国の利益を心配している」
--中国は国内問題にも矛盾を抱えています
「習総書記の課題の一つが政治腐敗の一掃。経済が良いときは隠れているが、腐敗は中国システムの病気だ。そもそも、中国では医者や学校における不公平な待遇からビジネスでの賄賂など、身の回りの腐敗に対する怒りが大衆にあった。経済成長が緩やかになると仕事が少なくなり、不満がたまる。インターネットを利用できる人口が6億人に拡大し、地方の腐敗情報が全国で共有される。抗議運動が相次いで起きるのはこのためだ」
--重慶市のトップを務めた薄煕来氏の不祥事では、数十億ドルにものぼる薄夫妻の不正蓄財が明らかになりました
「この不祥事は転換点だ。もともと不正は地方の問題で、中央の上層部は潔白だと大衆は思ってきた。温家宝首相の一族が数十億ドルの財産を蓄えたと米紙が報道した件も、北京では誰もが知っている事実だが、地方では驚きでとらえられた」
--格差が社会不安につながっています。
「中国は(貧富の差を示す)ジニ係数が高く、アフリカ並みに格差がある。このため、汚職により上層部にお金が流れるという印象が強い。もちろん、高所得者が存在するのは、当たり前の事象だが、高等教育を受けても、成功できない社会になると民が怒る」
「急成長で社会の調和が乱れた。年金システムも不備だ。教育、社会保障、環境問題につかう金額は国家予算の1割ほどに過ぎない。米国は社会保障だけでも約4割使っている。外貨準備が積みあがり、経済規模では世界1位をうかがう国としては低いレベルだ」
--強硬的な外交政策はこうした社会矛盾を覆い隠すためなのですか
「ナショナリズムの台頭は、構造問題に加えて、米国発の金融危機と米国の地位低下が影響している。基軸通貨としての米ドルに疑問符を付けたり、海洋での覇権国家になりたいと主張し始めた。国内問題に注力した●(=登におおざと)小平時代の政策から離れた証明だ」
--習総書記は、米国のように経済と外交・軍事をコインの裏表としてとらえているのですか
「東アジアの自由貿易圏の交渉で音頭をとるなど、地域経済でのリーダーシップには関心がある。しかし安保では、相互に利する“ウィンウィン”の政策というよりは、中国の主張を通す戦略。南シナ海の南沙(英語名・スプラトリー)諸島の領有権問題で突っ張るのは、経済的利権というより、ナショナリズムの観点からだ。習政権が安保で譲歩することはないだろう」
--オバマ大統領は人権や通商など従来の案件に加えて、イラン、核不拡散、サイバー安保などさまざまなテーマを中国と共有しようとしました。2期目で政策変更はありますか
「多角的な対話路線の政策変更はない。中国に責任のある国家としての意識を持たせ、有効でなければ、同盟国と共同で中国を説得するという戦略だ。とはいえ、(09年に)オバマ大統領が中国を初めて訪問してからは、期待の発射台が低下している。北朝鮮やイランの核開発問題など世界的な問題に共同で取り組もうとしたが、価値観と政策の共有が難しいことが分かり、幻滅した」
--中国の急拡張に、冷戦時代のような「封じ込め戦略」は取れるのですか
「米国はアジアでの利益を追求する戦略で、封じ込む政策は無理だ。米国企業は中国に投資を続けるし、中国も米国からの投資を求めている。地域の開放を求め、紛争の平和的な解決を求める姿勢だ」
--米中が軍事衝突する可能性は
「尖閣諸島と南沙諸島の問題では、中国の海軍が出撃するなど大掛かりな攻撃をしてきたら、米国は日本など同盟国を軍事支援するだろう。米国市民も支持すると思う。ただ、米国は紛争を求めていない」
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