「グウォォォッ!」
鬼が唸り、拳に力が増す。
「オレと力で勝負してみるか?」
ヴァンは笑い、力を込めた。ヴァンは楽しんでいる。琴音が絶望したこの状況を。
(格が違う…)
彼を見ていて分かった。自分とは全く違った場所でこのヴァンという人は生きていたのだろう。誰とも交わらず、ただ孤独を極めたのだろう。
(あなたの戦う姿は…)
そんな事を考えている内に鬼は脚を失い、まさにトドメを刺される瞬間であった。
(何だか…哀しい)
鬼の首が飛び、霧となり消えた。百鬼夜行の終焉である。いつの間にか抜いていた眼の色と同じ色をした剣をしまい、
「これでお守りは終わりだ」
まるで何事もなかったかのように言った。
「お前は、強い相手に出逢ったらそこで死を覚悟するんだな」間に入ってきた紅き眼の男、―ヴァンがそう貶した。しかし、そんな事よりも、琴音は目の前の光景に唖然とした。
「あなた…何をしたの…?」
麒麟の雷が九尾狐に当たり、九尾狐の焔が麒麟に当たり、そして…
「あなた…何なの…」
鬼の拳を右手だけで受け止めていた。
(勝てない…)
絶望に負け、心は折れた。槍が水に戻り、消え、最早戦意は無い。しかし、魔物には関係ない。『神』ランクの幻獣3体全てが、琴音に向けて全力の一撃を放った。麒麟の雷が、九尾狐の焔が、鬼の拳が、琴音の目前に迫り、そして…消えた…
紅き眼が鈍く光る…