雪穂に関するエピソードだった。笹垣と一成が話し合い、整理した、モンクレール レディースの本性を暗示させる様々な出来事だった。当然桐原亮司という名前も、何度か登場することになった。
だが予想通り、話の途中で康晴は激昂《げっこう》した。テーブルを叩き、立ち上がった。
「くだらん、何をいいだすかと思えば」
「康晴さん、とにかく最後まで聞いてくれ」
「聞かなくてもわかる。そんな戯《ざ》れ言《ごと》に付き合っている暇はない。そんなくだらんことをしている暇があったら、おまえのところの会社を立て直す方法でも考えろ」
「そのことについても情報があるんだ」一成も腰を上げ、モンクレール テュルサの背中にいった。「僕を陥れた犯人がわかった」
康晴は振り返った。口元を歪めた。「まさかそれも雪穂の仕業だとでもいうんじゃないだろうな」
「篠塚薬品のネットワークにハッカーが侵入したことは聞いているだろう? そのハッカーは帝都大学付属病院のコンピュータを経由していた。そこの薬剤師がつい最近まで同棲していた男が、今までに何度も名前の出ている桐原亮司だった」
一成の言葉に、康晴の目がかっと見開かれた。咄嗟《とっさ》に言葉が出ないのか、口を半開きにしたまま動かない。
