涙が出て、また涙が出た


彼女のことはいつもわからなかった

幼い頃の記憶は全然なくって

彼女の腕に抱かれたり、あやされたり

甘えくさった記憶がないんだ


赤ん坊をお風呂に入れるのがこわくて

下の階のおばさんにお風呂入れをして

もらっていたとか、仕方なく子供を置いて

歯医者に行ったとかそんな話ばかり聞いて

不思議だった


お絵かきが好きで、テレビの前で歌って

踊っていたという話も聞いたなー


少し大きくなった私に「あなたは客観的な

子だった」とか、ご近所の奥さんに

「難しい子だと言われた」とか、平気で

言ってきたりもしてショックだったのは

忘れられない


いつもいつも、赤やピンクの服ばかりを

着せられて私は赤もピンクも嫌いになった

一緒に服を買いに行って、なかなか決まらず

何店舗もぐるぐる周る私にごうをにやして

「もうお金渡すから一人で決めなさい」と

先に帰ってしまった


自分の欲求に素直な人だった。子供がいても

自分のやりたい事は押し進める。

それでも、私がやりたがった事に付き合った

りもしてくれたか。手作りのお菓子作りや

餃子作りなんかは楽しかったのかなー


父にはわりと絶対服従的なところあったかな

子供がひどい罵倒を受けていても、時に

叩かれていても、彼女は黙って見ているだけ

傍観者だった気がする、そんな時代か。


乙女チックなとこあった。少女のような顔を

しながら嬉しそうに細々とした事をするのが

好きだったよね。可愛かったよね。


可哀想なことも多くて守ってあげたくも

なったし、私には全く必要ない事でも

笑顔で「私がやってあげたいのよ」と

言われてしまうとどうしても拒めなかった。


まー、私の思う母親像とはかけ離れていたし

彼女にとっても私は娘像とはかけ離れていた

のだろうな、と思う。


私は彼女を精神面で支え、彼女は私を

金銭面で支えていた。そんな間柄だったのかな。


そんな彼女が死んで、私は動けなくなって

しまったのよね。


時間がやけにゆっくりと過ぎて、手の先

足の先が妙に冷え切っていて、力が出ない。

やる気も出ない。


ほんの些細なワードがことごとく彼女を

思い出させるわけで。半端ない。


胸の奥が下の方にズーンと下がるように

苦しく、ことごとくただひたすらにしんどい

だけなんだ。


屈託のないあの笑みが見たいだけなのに

私を見るあのあったかい雰囲気を感じたい

だけなのに、もう会えないんだね。


どこに行ってしまったのかなー

すぐ近くにいたでしょ?

彼女のとりとめのない愚痴さえも

また聞きたいくらいだわ


不安で弱気な発言も、ちゃんと聞いて

あげたいくらいだわ


実際は彼女の問題で誰もどうにもして

あげられないのに、彼女はいつもおんなじ

所で堂々巡りで最後は目を背けてしまうのよね。

聞いてるこっちももどかしいばかりだった

けど彼女はきっと変えられない自分がすごく

もどかしかっただろうな。


それでも、働くあなたを尊敬してた。

父や兄を決して見捨てない姿勢に強さを感じた。

嫌であろう事も引き受けるあなたを支えたい

と思った。


力不足で、ごめんね。

大人びていて、ごめんね。

苦言ばかりで、ごめんね。


いつ、なんどきも私がお願いした時に

必ずといっていいほど「いいよ」って

言ってくれてありがとう。


生み育ててくれて本当にありがとう。



天国で安らかに眠ってね。

そして、これからも見守っていてね。




大好きです。