ネタバレ厳禁
2022年の年始め、コロナ渦のミュンヘン某映画館で、いい映画を観れたと思います。
とても良い仕上がりで本筋シナリオの線も太く、壮大な世界観が創造されています。
1947年白黒「ナイトメアアリー」の復刻映画!
主演を務めたブラッドリー・クーパーは、コメディチック演技も当然のことながら、
体を張ったアクション要素も、甘美で切ないラブストーリーも出来ると来て、
ノリに乗っていざ2022年新たなゲートを開けたんじゃないでしょうか。
全ての表現ができる彼だから、このような長尺プロットでも見てられるのでしょう。
さあ、番手で言うとルーニー・マーラーが次点に来るのでしょうか。
彼女に関しては魅力が溢れていましたね。
彼女が惨めに、幼気に観客に映れば映るほど、
ブラッドリー・クーパー演じるスタンがヒールに見える裏仕組みになっている。
筆者は、ドラゴンタトゥーの女以来ルーニー・マーラーを見ましたけど、
フェミニンさが増したように見えました。母性がスクリーンから伝わってきました。
ケイト・ブランシェットなどキーマンは続きますがキャストはこの辺にして ...
(内容)
1941年のアメリカの片田舎、
スタン (ブラッドリー・クーパー)は、ある移動型サーカス集団が滞在する町に流れ着く。
そこには、小人、軟体人間などの奇人・変人が集まり見世物小屋で観客を楽しませていた。
スタンがさらに歩を進めていくと "Geek"という文字が目に付く。
彼がその"Geek"を見て、この移動型サーカス集団の一員として過ごすことにより、
様々な人間と出会い、そして悲しい過去と這い上がろうとする未来が描かれている。
※ 勿論、ロマンティックな恋愛のシーンもあります。
(感想) 間違いなくおすすめ映画です。
時代背景は1941年。
ピンと来る人も多いのは、12月には日米開戦が始まる年だ。
スタンは春先もしくは初夏にはこのサーカス集団と出会う。
数日後にテントなどを吹き飛ばさんばかりの嵐に襲われている。
場所はおそらくアメリカ中南部。
砂漠地帯があったり、健在のカウボーイスタイルである。
作中前半はほぼサカース団の滞在する町の中でほぼ完結する。
巨大なセットを組んで撮影したのだと思うが、この世界観が素晴らしい。
美術さん、技術さん、メイクさんチームに賛辞を贈りたい。
さあ、後半はサーカス集団から独り立ちをして、
スタンが一人前の詐欺師となり一躍成功を収めていくところが描かれる。
前半部分でほんの少しだけしか描かれなかったスリル要素が
後半に入り、テイストを強めていく。
スタンの狂気が増していき、その先に彼を待つ運命が....
皆さんが目撃する結末である。
筆者は今作の結末は読めていました。
劇中のような偽の読心術ではない!
古畑任三郎「魔術師の選択」の山城新伍でもない。
通常、そのような時には冷めてしまったり、低評価をつけるのですが、
この『ナイトメア・アリー』は違います。
むしろ、そう収まってくれて良かったバンザーイです。
とても高評価です!
そんな映画勘みたいなのが一致して良かったです。
ポスターバックの小難しい馴染みのない英単語 ....
ブラピの『セブン』を覚えている方もいるでしょう。
7つの大罪が今作の基本のテーマになっています。
Pride (傲慢)
Greed (強欲)
Envy (嫉妬)
Wrath (憤怒)
Lust (色欲)
Gluttony (暴食)
Sloth (怠惰)
これらはカトリック教会における、
人間を罪に導く可能性があると見做されてきた欲望や感情のことを指すものである。
どんな人にでも関連のある事であり、一度は何かしらの罪意識を感じたはずである。
さて、それでは
人というものはお金を手に入れたら、さらに欲しくなり
美しいパートナーを手に入れたら、さらに他の人が欲しくなり、
じゃあいざ自分は、自分には甘くて。
人ってそんな生き物ですよね。
スタンは成功を収めていくけども、
人としての大切なものを教えてくれる人は誰もいませんでした。
家族にも恵まれていませんでした。
そんな男の末路を今作は数億円払って、130分くらいで私たちに見せてくれます。
感覚的には
「イソップ寓話」、「孔子の教え」や教訓カテゴリーの作品。
だから見終わって観客を迷路に置いてけぼりにするような作品では絶対なくて、
「そうか、最近ちょっと偉そうだったな、
妻にありがとうって言ってなかったな、
田舎のお母ちゃんに電話してなかったな
無いものを嘆くのではなくて、有るものに感謝を覚えよう」って
襟元を正させてくれる
そういう作品である。
日本公開 2022年 3月25日 決定
コロナ渦なので、日本の映画館でどのような措置があるか分からないけど、
やっぱり映画は映画館で観るのがいいよね、
そう思った、皆さんに素晴らしい1年の始まりを。
「実るほど頭の垂れる稲穂かな」
ナイトメア・アリー (2023年) :85 点