A Day with Suzanne -A Tribute to Leonard Cohen | チーフ・エディターのブログ

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音楽配信の仕事上年間クラシック中心に毎年1,200枚ハイレゾの新譜を聴く中で気になったものを1日1枚。

Joel Frederiksen(Br, Lute)Emma-Lisa Roux(S, Lute)Hille Perl(Gamb)

2016年に亡くなったカナダのボブ・ディランと呼ばれた詩人、作家、シンガーソングライターのレナード・コーエン。そのコーエンの音楽が大好きなオペラ歌手ジョエル・フレデリクセンが、コーエンをトリビュートして制作したアルバムなのだが、すごいのは現代のコーエンの名曲とルネサンス期を代表する作曲家であるジョスカン・デ・プレ、ラッソーらの曲を別々に歌うのではなく編曲して一つの曲にしてしまっているところ。コーエンの多くの楽曲を出版しているソニーミュージック傘下のドイツ・ハーモニアムンディからのデジタルリリースでCD形態では2023年の発売。

 

哲学的な歌詞が多いコーエンの名曲は数多いが、ここでは誰でも一度は聴いたことのあるであろう『ハレルヤ』を筆頭に『哀しみのダンス』、『バード・オン・ワイヤー』『スザンヌ』などが、16世紀のフランドルの作曲家のメロディーと見事に融合しており全く違和感を感じさせない。英語とフランス語も混じったりしている。

 

演奏はリュートとヴィオールにフレデリクセンのバリトンが乗っかるという吟遊詩人のような実にシンプルな演奏形態をとっているところもコーエンの元歌の渋い雰囲気に合っていると思う。確かに聴いてみるとどちらもどこか寂しげなメロディーを持ってはいるが、なんせ500年も時を隔てているわけで、その両者がこんなに似通っているのには正直驚きを感じてしまう。こういうのを思いついたアーティストの感性と創造性が光る。

                        2022-1300