それは片側2車線の国道を走っている時の事だった。
前方10メートルの辺りで、一心不乱にエサをついばむ鳩の姿が、突然視界に入った。
左側車線の中央で、全く危機感なく、貪欲にエサをついばむ一羽の鳩。
左側車線を走行中の私はうろたえた。
何故、そんなところで食餌をしているのだ。
右側車線には別の車が走行中。急に車線変更するのは無理。
しかも距離がない。速度を落として右寄せする間に、鳩の胴体を踏みつけてしまう。
後続車もある。
急ブレーキはこれまた危険だ。
瞬間、色々な対応が頭をよぎるが、どの対応も支障がある。
鳩は左側車線の中央にいる。
それを踏みつけぬように、ゆっくりと、車輪間で跨ぐように通り抜けるしかない、という結論に至った。
速度を落として、鳩を跨ぐ。
車体の底から「カサカサ」という異音が聞こえた。
轢いてはいない。しかし、走らせている車の車高は低く、鳩の羽根に接触したのだ。
あるいは、急に車体に覆われて、ようやく羽ばたこうとしたのか。
嗚呼。
バックミラーで後続車が到達する前の瞬間、体勢を崩し、起き上がろうとする鳩の姿を確認した。
その鳩に、次々とやってくる後続車がどう対応したかはわからない。
小さな命は損なわれたかもしれない。
鳩に危害を加える事になってしまった。
どうすれば良かったのだろう。
もっと良い対応が出来たのではないか。
その想いをずっと引きずって帰った。
そして、眠れぬ夜、これを書いている。
帰宅時には、反対車線を走行しながら、その辺りをうかがってみた。
しかし、何の変化も見てとれなかった。
そりゃそうだよね…と想いながら通りすぎた。
帰宅して、てくてく歩いて買い物に出掛け、途中の神社でお賽銭を投じ、手を合わせた。
清めたまえ。祓えたまえ。
鳩は、あまり好きな鳥ではない。
しかし、平和の象徴。
そして、ちいさなちいさな立派な命。
戦争にあっては、人間同志が意思をもって命を奪い合う。
今現在も、いくたりもの命が失われている。
現在は当事者でない事を有り難く思う。
平和が良いに決まっている。