不良債権デューデリジェンス
金融機関による不良債権のバルクセールの話を最近聞かなくなりました。
中小企業円滑化法により、不良債権の譲渡が止まっているらしいというのが業界での話ではあります。
10年以上も前に不良債権のデューデリジェンス業務で起業したので、寂しくもありますが。
不良債権デューデリジェンスに初めて関わった1998年ころは、売手(セラー)は都市銀行・信託銀行・地方銀行・生保・損保など様々で、また、投資家である投資銀行やヘッジファンドの担当者には外人が多く、デューデリジェンスレポートは日本語と英語の併記が普通で、投資家にレポートを説明するロールアップミーティングも外人が投資家側の責任者の場合、それに合わせて英語でのミーティングが多かったように思います。
担保不動産はゴルフ場・ホテルから発電所・無人島などの大型・特殊物件も多くありました。
毎回、彼らを納得させるために、評価額はもちろん、それに至るシナリオにも細心の注意を払って評価していました。全国に及ぶ数十件の担保不動産を2週間から3週間で評価してレポートにまとめる業務なのですが、重なって依頼を受けている時もあり、徹夜も少なくありませんでした。かつ、ロールアップミーティングも長時間に及ぶのが普通で、午前中にスタートして深夜に終わることがあったり、数日間にわたって投資家のもとに通うこともありました。
それから2004年くらいまでは、セラーは毎期のほぼ決まった時期に出してくる都市銀行が主流だったように思います。担保不動産は、賃貸マンション・オフィスビルをはじめ、やや小型の物件が増えてきました。手がけたバルクセールの件数はあまり変わらず業務は多忙なものでした。相変わらず、短期間に多くの件数のレポートにまとめる必要がありました。ただ、投資家の担当者は日本人の方になり、レポートも日本語のみになりました。一方、投資家側も不動産の種別・類型毎の理解だけでなく相場感も持つようになり、ロールアップミーティングではシビアな意見が交わされるようになって、より細心の注意を払ってレポーティングと説明を行う必要がありました。
その後、2008年の金融危機に至るまでは、徐々にバルクセールの件数が少なくなっていき、巡航速度的に毎期一定のバルクセールが出されるようになっていました。担保不動産は、区分所有マンションや戸建の小型の一般不動産が多くなってきました。
ここ1-2年は、日本での投資を手仕舞いする方向の投資家による所有債権の売買(セカンダリーセール)が目につく程度でした。
数えますと自分の担当分だけでも、約10年間で1万件に及びます。不良債権デューデリジェンスでは、担保不動産の評価だけでなく、競売、任意売却の別をはじめ、処分(出口)のシナリオを判断します。当時、投資家にとっても債務者にとっても最適な結果に導かれるように、処理される不良債権となった債権の担保たる不動産を適切な評価をおこなって適正な価額を提示することで不良債権処理に貢献出来るという自負に支えられて業務をしていました。
ランドバンキング
ランドバンキングという不動産投資があります。
販売(事業)会社が分割して販売する持分の土地(素地)の段階で投資するもので、販売する会社が開発許可を受け、その会社が自己で開発するか、デベロッパーに売却するかして、その差額で利益を得るというもの。
人口増加が継続していて、市街化エリアが広がっているところであれば、その市街化区域に隣接していて近い将来開発許可が出ると想定できる土地であれば利益を得る可能性が高いでしょう。
勿論、市街化されない(開発許可が出ない)リスクがあることと、4年から7年間は投資期間が生ずる(原則、引き出したりできない)ということもあるので、万人受けする投資ではないですが、投資に対して倍のリターンを受けられるというのがパターンなのが魅力です。
米国、カナダなどで事業をしている会社があります。
海外不動産投資の有望国(地域)はどこか?
「現在、海外不動産投資の有望な国(地域)はどこか?」ということを時々質問を受けますが、実際はいろいろな視点があるでしょうし、当方も世界中を熟知しているわけではなく、知っている限りの中での感覚ということになりますが、思いつくまま書いてみることにします。
海外、国内を問わず、不動産投資は大きく分けて、キャピタルゲイン指向、インカムゲイン指向、または両者の混合指向が考えられますが、最もシンプルなキャピタルゲイン指向の不動産について考えてみます。
キャピタルゲイン、つまり、投資時点より回収時点で価格が上昇し、その価格差を持って利益とされる不動産投資ですが、土地のみか、土地建物か、の別で言えば、建物が経年減価の可能性があるため予測しにくいので、土地について考えたいと思います。
土地についてキャピタルゲインが得られるためには、①金融危機のような特殊な変動要因がない世界情勢が続く期間であること、②政治経済的および不動産の政策的に安定したものであること、③地政学的に比較的安全な立地であること、④人口増加による土地需要の増大があること、などが思いつきますが、①は世界的なことなので置いておくとして、②から④を満たすのはどういった国(地域)かと考えますと、「政治経済的に安定している先進国のなかで、かつ人口増加が進行中である国」ということになるでしょうか。
下記の世界の主要都市の人口推計抜粋で、先進国の中で2010年-2015年の間に人口増加が予測される主な都市を記載しましたが、この中で、増加率の高いシドニー(オーストラリア)とトロント(カナダ)が該当しているように思います。
両都市とも、地政学的に比較的安全な地域であり、、移民政策を採っている国の最大都市で人口増加の趨勢が今後もしばらく続くと思われますので、特に住宅需要が堅調であり、したがって住宅地を中心に土地価格は堅調に推移していくのではないでしょうか。
世界の主要都市人口の推移と将来推計:2000~2015年 | ||||
都 市 | 国 | |||
2000年 | 2015年 | 2000~2015年 | ||
シドニー | オーストラリア | 4,099 | 4,829 | 1.10 |
トロント | カナダ | 4,607 | 5,762 | 1.50 |
北京 | 中国 | 10,839 | 11,060 | 0.13 |
上海 | 〃 | 12,887 | 12,666 | 0.00 |
パリ | フランス | 9,693 | 10,008 | 0.21 |
ベルリン | ドイツ | 3,325 | 3,329 | 0.01 |
東京 | 日本 | 34,450 | 36,214 | 0.33 |
ロサンゼルス | 米国 | 11,814 | 12,904 | 0.59 |
ニューヨーク | 〃 | 17,846 | 19,717 | 0.67 |
実際、住宅価格は2007年と2009年の比較でもオーストラリアとカナダ(トロントではなくバンクーバーのデータですが)の住宅価格は上昇しています。
「先進国における住宅価格上昇都市 2007-2009年」
シドニー +3.4%
バンクーバー +12.1%
パリ +5.3%
ベルリン +2.7%