私の名前はグエン・V・植松…
名前の通り日系ベトナム人の2世だ。
UC0060年に生まれた私は、18歳の時に地球連邦軍に就職した。
後に言う1年戦争の時代だ…
元々は前線になんか出るつもりは無かった、だがパイロット特性有りとの事で、意図せぬ形でパイロットとなった。
その頃には主戦場は宇宙へと代え、連邦優勢との声も多い中、大した気持ちも無く漠然と仕事として宇宙に上がることになる。
あてがわれたのはRGM-79。
連邦の看板とも言えるガンダムに似た機体を授けられたが、機体を受領しサラミス級で宇宙に上がった時は、すでに12月25日のクリスマス。
戦場はア・バオア・クーと呼ばれるジオンの要塞だと分かり向かい始めるが、到着前には既に終戦を迎えていた。
あれは何だったのかな?…
私にとっての1年戦争は、そんな感想しか残さなかった。
そして元々アースノイドだった私は地球へ帰還…
その後の細かい紛争は知っては居たが、ただ知るだけだった。
後にジャブローへと移動が決まった時、あのデラーズ紛争が起きる。
その時私はジャブローで訓練教官をしていた。
一度も実践経験が無いのだが、これまでの戦争で上官が減りすぎた為、私は戦時特例で少尉にまで階級が上がっていた。
「実践経験も無い少尉さん」
軍属以外の周りに揶揄されてる事は知っていた。
だが、実際そんな物だったのだ。
そんな悶々とした日々の意識を変えたのは、頭上を通過して行った巨大過ぎるスペースコロニー…
オーストラリアに堕ちたそれは、ただ見ただけで意識を変えられた…
また時は流れUC0087年…
私はジャブロー勤務のまま、階級は中尉になっていた。
あのデラーズ紛争からの流れに乗り遅れ、ティターンズにも選ばれなかった私は、ジャブロー外周部の防衛任務の中隊長をしていた…
軍籍だけは10年を越えたが、与えられた階級とは裏腹に、愛機はRGM-79SC…
一年戦争時のエース機ジムスナイパーカスタム…
かつてのエース機と言えば聞こえは良いが、もう時代遅れのロートル機…
だが至って平和…その表現がピッタリのジャブローには、それでじゅうぶんだったのだ。
未だ戦歴ゼロ…
自分でも呆れるそんな最中に、エゥーゴと呼ばれた彼等の強襲が有った。
だが、私の中隊位置からは、彼らの動きすら見る事は無かった。
そんな折に全周波無線で叫びにも似た声が聞こえた。
「私は地球連邦軍ジドレ少佐だ、ジャブローは核爆発を…」
上手く聞き取れなかったが、時を置かず異常な熱反応と地震をモニターした。
ハッキリ言えば逃げ遅れた…
だが外周部の防衛任務だった為、運良く核爆発を逃れる事は出来た。
だが…数多くの仲間が散った…
その中に同期のユングも居た…
指揮系統を無くし、部下を従え何処かに合流せねば…
その様に動く日々の中で、耳を疑う情報を聞く。
ジャブローはエゥーゴの核攻撃で壊滅したのだと…
ならば!私が見たのは…
私が直に聞いたあれは何だったのか?!
連邦に不信感しか持てなくなり、私達は流浪の民となった…
MIA認定は受けているだろう…
逃亡と見做されれば銃殺だ…
いや…軍に都合の悪い事を知っているだけで、果たして命が有るだろうか?…
私達は廃坑の中に愛機を隠し、名を変え生きる事とした…
宇宙ではティターンズが敗れ、グリプス戦役が終わった…
コンピューター関連のジャンク屋をしていた時に、私はある少女と出逢った。
ミリー・ラトキエと名乗る少女。
ジオンと連邦に翻弄され亡くなった姉を持つ少女に、カイ・シデンさんを紹介される。
正直なところ、何を信じたら良いものか迷ったが、今の生活を変えるチャンスとも思った。
それに、あのホワイトベースの有名人である、カイさんに興味もあった。
事情を知りカイさんは、ハヤト・コバヤシさんを紹介してくれた。
そしてハヤトさんは、「貴方にはいつか必要になるかも知れない…」そう言って、私のスナイパーカスタムを改修し、ある人物に会わせてくれた。
その人物は砂漠の民…
ヨンム・カークスと呼ばれる男だった。
皮肉な事に、私の素性の全てを知り、私を受け入れてくれたのは…
軍属という世界に入った時に、敵と対峙したジオン残党軍だった…
私のスナイパーカスタムはカラバによりRGM-179 GM2ベースのスナイパーカスタム。
RGM-179SCに生まれ変わり、カークスの手により隠匿してもらう事とした。
宇宙ではネオ・ジオン紛争が起こり、あのハヤトさんも亡くなった…
このまま戦争など記憶の果てに追いやられ、私のスナイパーカスタムも朽ちていけば良い…
そんな様に思った時の事だった…
カークスは言った「力を貸して欲しい」と…
皮肉な物だ…
私の意識を変えた頭上を飛んだスペースコロニー…
あのコロニーが堕ちた地で、恩人達が運命に立ち向かうと動くと言う…
「私も向かおう」…そうカークスに応え、私はスナイパーカスタムに火を入れた…
私の人生は何だったのか?
連邦の真実は何だったのか?
今も答えが出せずにいる私に、そこに何か答えは有るのか?
ハヤトさん…貴方が言った「貴方にはいつか必要になるかも知れない…」それは今なのか?
全てを…まるで怨念の様に、私に纏い続ける何かを振り払う為に!
今こそ私は闘おう!
『私はきっとこの日を待ち続けたのだ!』
『これは私の怨念返しだ!!』