『サケ』ってさ
身が容易く「裂ける」から
『鮭』って言うんだってさ。
たしかに、
醤油のノリがイマイチだよ。
強いて「シャケ」弁の焼き「鮭」
注ぐ醤油は身を掠めるきり。
塩分に気をつけるとして。
「裂ける」から「鮭」か。
だけど奴ら
訳もなく「裂け」てるんじゃないんだね。
川に産まれて、海で育って
また産まれた川へ戻る。
激流に耐え、逆流に逆らい
時折、熊なんかに脅かされ。
志半ばで息絶えていく同士
お別れの涙もその流れに消えてさ
掻き分け、掻き分け
産まれた川へ戻るんだよ。
そして死んでくんだよ。
皆仰向けになってさ
青に突き抜ける空を睨んで
全部引き「裂け」ちゃった。
故の「鮭」かと思いきや。
奴ら
マイナスに「裂け」てるんじゃないんだね。
その死に様ったら
一片の悔いもない様子なんだ。
沢山の絆を産んで
星屑ほどの命を残したからね。
身は「裂け」て食べられちまっても
心とか魂みたいなもんは
決して「裂け」ないから
「鮭」になったのかな。
もしそうだとしたら
なんかかっこいいな。
「俺たちゃ命枯れても
魂は残りまっせぇ、かかって来なさい」
って感じでね。
今度焼き「鮭」を食べるときは
皮までちゃんと食べるかな。
「酒」と共に感謝しながらね。