今回は長引く咳や痰の治療薬のおおまかな特徴について説明します。
通常は「問診」の後で身体診察、検査、診断、治療薬の説明の流れですが、一般的に「問診」でかなり診断がつく、という意見もあります。それで身体診察、検査を割愛させていただき、
以下に多く使用される治療薬の分類を掲げて、前回のイメージに関連付けて説明します。
① 吸入用ステロイド薬;A.とD.に関して多くは有効で副作用も少ないが、声がれやむせ込みが問題になることがある。(商品名;パルミコート、アニュイティなど)
② 吸入用β2刺激薬;B.に関して多くは有効だが増量によって動悸や嘔気などの副作用が出やすい。(商品名;セレベント、メプチンエアー、サルタノールインヘラーなど)
貼付用β2刺激薬;B.に関して有効だが全身に作用するため動悸や嘔気などの副作用が出やすい。(商品名;ホクナリンテープなど)
③ キサンチン誘導体;B.に関して有効だが全身に作用するため動悸や嘔気などの副作用が出やすい。必要な際に血中濃度を測定する。(商品名;テオドール、ユニフィルLAなど)
④ 吸入用抗コリン薬;B.とC.に関して有効だが緑内障や前立腺肥大の合併では禁忌の場合がある。(商品名;スピリーバ、アトロベントエロゾルなど)
⑤ ロイコトリエン受容体拮抗薬;D.に関して有効。(商品名;シングレア、オノンカプセルなど)
⑥ 抗ヒスタミンH1受容体拮抗薬;D.に関してアレルギー性鼻炎・後鼻漏などに有効。
(商品名;アレグラ、ザイザル、アレジオン、デザレックスなど)
⑦ 漢方薬;A~Dのいずれか不明。感染後咳嗽に対して麦門冬湯、喉頭アレルギーに対して麦門冬湯、麻黄附子細辛湯が有効との報告がある。副鼻腔炎に対して辛夷清肺湯。
⑧ 喀痰調整薬;C.に関して気管支炎や肺炎、COPDや気管支拡張症などで使用される。
(商品名;クリアナール、ムコソルバン、ムコダインなど)
⑨ マクロライド系抗菌薬;A.とC.で喘息、後鼻漏、副鼻腔炎、COPDや気管支拡張症に。
(商品名;ジスロマック、クラリス、エリスロシンなど)
⑩ 中枢性鎮咳薬;A~Dに関係なく、感染後咳嗽で自然軽快傾向がある場合に多く使用。
(商品名;メジコン、コデインリン酸塩、など)
⑪ ⑨とそれ以外の抗菌薬;抗菌効果あればA.とC.で、感染性咳嗽で細菌性の場合に使用。
(商品名は割愛します。以上にはごく一部の例を商品名として挙げています。)
実際には以下の様な吸入薬の合剤が多く使用されます。
①+②(商品名;シムビコート、フルティフォーム、レルベア、アドエアなど)、
①+②+④(商品名;テリルジー、ビレーズトリ、エナジアなど)
また、吸入用薬剤にもパウダーを吸う(DPI)、ミストを吸う(MDI)もの、その他の製剤があり、患者様との相性で効果と副作用に相違があります。吸入用β2刺激薬にも長時間作用性(LABA)と短時間作用性(SABA)とがあり、SABAは発作時に限って使用します。ステロイド薬やβ2刺激薬の内服薬は副作用に注意しながら必要な時に限って使用します。