火傷の皮膚移植を再度行い、同時に経口栄養摂取の為のリハビリが始まった。

ブルーベリーヨーグルトを、少しずつ食べさせた際には、

「これは何の味ですか~?」と 元気で笑顔の多い看護師が聞くと

「イチゴ!」 

大きなはっきりとした声で答えたと言う。

「〈まぁ正確には ブルーベリーなんですけどね~〉って 
心で思いながらも そんなに遠くない答えなので いいっかって感じでした~!」

凄い!父さん!家族にも笑顔が溢れた。

「お茶が飲みたい」

父にそう言われた私は とろみをつけた緑茶を スプーンで ほんの少しずつ口に運ぶ。

「熱いから気をつけて下さいね」

看護師の指導のもと 恐る恐る口に運ぶ。

ごくり。
父が咀嚼したお茶が 私達の緊張の中 のど仏を大きく動かしながら呑みこまれていく。

「美味しい?」

「うん」

又、新しい一歩を進めた。家族皆で喜んだ。

「爺ちゃんって凄いよな!」二男は 感嘆の声をあげた。



次の日、妹が見舞いに行くと

「先程、ババロアを召し上がりましたよ」

看護師に言われ 妹はホッとした気持ちで 
リクライニングタイプの車椅子に乗せられた父の傍へ向かった。



〈様子がおかしい・・・〉

父の口の端から白い物が溢れ出てきていた。

「お父さん、口開けてみて」

妹に言われた父は 口を少しだけ開けたそうだ。

口の中、舌の下に 白い物があった。

〈これって ババロア 呑み込めていないんじゃ〉

慌てて 看護師を呼びに行き 口の中を見てもらう。

「あっ 残ってますね。すみません。すぐに出しますね」

上手く飲み込めていない との判断で 経口栄養摂取のリハビリは暫く中断となってしまった。

若い頃から 健啖家で 美味しい物、珍しい物が大好物だった父だ。

なんとか 口から食べさせてあげたい。

家族はみな同じ思いでいた。