気づけば桜は完全に散ってしまっていた。梅雨のじめじめした空気がぼくたちの体につきまとった。ぼくは毎日汗だくになって練習をしていた。
大会がちかい。皆がそう感じていた。
ベンチ入りのメンバーが大会に先駆けて発表された。もちろんのこと2、3年生でメンバーが構成された。3年生の気合いにチームの士気は高まった。
3年生は練習中はとても厳しく、イライラしていたのが目に見えて確認できた。でも練習が終わるとやさしく接してくれた。
「もうすぐ試合ですね。」
ぼくはナカザワ先輩に話かけた。
「試合まで10日もないんだよ。もうあと10日で引退なんて考えると結構寂しいわ…」
「負けるつもりなんですか!?」
「あっ、そうか。じゃあ10日じゃないな。」
「甲子園いったらあと1ヶ月はありますよ。」
「どちらにせよあと1ヶ月後には野球部ではないんだな。」
「まぁそーですけど…」
ぼくは言葉に詰まった。
海浜高校の試合は夏休み2週間前。期末のテストがある中、練習は日に日にピリピリとした雰囲気になり、ぼくたち1年生は上級生に近づきづらくなっていた。
そして大会当日を迎える。
時はあっという間に過ぎていった。
3年生の引退が決まる。初戦敗退。無情にも現実は厳しかった。2年半練習してきたことがたったの2時間弱で終わってしまう。ある意味、高校野球というものが実感できた瞬間だった。
まだ教わっていないことが山ほどあるなか、先輩方がもう明日からいないと考えると自然と涙が流れた。
試合のあと、顧問から1・2年に集合がかかった。
「明日からこのメンバーでスタートをする。3年生の試合を見て、個々で感じたことは違うと思うがこれからどうしていきたいかしっかり話し合っておけよ」
とてもざっくりとした内容だった。新チームに対して意気込みを見せるというより、3年生が引退するということを惜しむことが伝わってきた。顧問の先生は3年生に対しての期待があった。その期待が初戦で打ち砕かれてしまったことで完全に気落ちしているのかわかった。
「先生はたぶん何日か部活には来ないんじゃないかな。」
誰かがボソッと口にした。
毎年毎年こんな同じ思いをするなんて先生の立場も大変だな。
ぼくはそう思いながら3年生との最後の会話を楽しんだ。


