泣きましょう。
「13年後のクレヨンしんちゃん」
知っている方も多いと思いますが
一昔前まえに話題になった
泣ける2ちゃんねる
の1つです。
あのクレヨンしんちゃんの
13年後を書いた
超感動のお話(T_T)
俺がリスペクトした
超ホットな感動作をみれば?w
「13年後のクレヨンしんちゃん」
僕はシロ、しんちゃんのともだち。
十三年前に拾われた、一匹の犬。
まっ白な僕は、ふわふわのわたあめ
みたいだと言われて。
おいしそうだから、抱きしめられ
た。
あの日から、ずっといっしょ。
「行ってきマスの寿司??????。」
あいかわらずの言葉といっしょに、
しんちゃんは家から飛び出していっ
た。
まっ黒な上着をつかんだまま、口に
食パンをおしこんでいるところを見
ると、
今日もちこくなんだろう。
どんなに大きな体になっても、声が
低くなっても、朝に弱いのは昔か
ら。
特に今年は、しんちゃんのお母さん
いわく『ジュケンセイ』というやつ
だから、
さらにいそがしくなったらしい。
たしかに、ここのところのしんちゃ
んは、あんまり僕にかまってくれな
くなった。
しかたのないことだとしても、なん
だかちょっと、
うん。
さみしいかもしれない。
せめてこっちを見てくれないかな、
と言う気持ちと、がんばれという気
持ち。
その二つがまぜこぜになって、とに
かく少しでも何かしたくなって。
小さくほえてみようとしたけれど、
出来なかった。
なんだかとても眠たい。
ちかごろ多くなったこの不思議な感
覚、ゆっくりと力が抜けていくよう
な。
あくびの出ないまどろみ。
閉じていく瞳の端っこに、しんちゃ
んの黄色いスニーカーが映って。
ああ今日もおはようを言い損ねた
と、どこかで後悔した。
ぴたぴたとおでこを触られる感覚
に、急に目が覚める。
いっぱいに浮かんだ顔に、おもわず
引きぎみになった。
ひまわりちゃんだ。
「シロー。朝ご飯だよ。」
そう言いながらこちらをのぞき込ん
でくる顔は、しんちゃんに似てい
て。
やっぱり兄妹なんだな、と思う。
「ほら、ご飯。」
ひまわりちゃんは、片手で僕のおで
こをなでながら、もう片方の手でお
わんを振ってみせる。
山盛りのドッグフード。
まん丸な目
のひまわりちゃん。
あんまり興味のない僕のごはん。
困った顔のひまわりちゃん。
僕は、それをかわるがわる見なが
ら、迷ってしまう。
お腹は減っていない。
でも食べなければひまわりちゃん
は、もっと困った顔をするだろう。
でも、お腹は減っていない。
ひまわりちゃんは、
悲しそうな顔になって、
僕の目の前にごはんを置いた。
そして、
両手でわしわしと僕の顔をかきまわ
す。ちょっと苦しい。
「お腹減ったら、食べればいいよ。」
おしまいにむぎゅうっと抱きしめら
れてから、そう言われた。
ひまわりちゃんは立ち上がると、
段々になったスカートをくるりと回
して、
そばにあったカバンを持つ。
学校に行くんだ。
いってらっしゃいと言おうとしたけ
れど、やっぱり言う気になれなく
て。
僕はぺたんとねころんだ。
へいの向こうにひまわりちゃんが消
えていく。
顔の前に置かれたおちゃわんを、
僕は鼻先ではじに寄せた。
お腹は、ぜんぜん空いていない。
ごはんを欲しいと思わなくなった。
おさんぽにも、
あんまり興味はなくなった。
でも、
なでてもらうのは、
まだ好き。
抱きしめられるのも、好き。
『ジュケンセイ』っていうのが終
わったら、しんちゃんは。
また僕をいっぱい、
なでてくれるのかな。
抱きしめてくれるのかな。
そうだといいんだけど。
目を開くと、
もう辺りはうすむらさき色になって
いて。
また、
まばたきしているうちに一日が過ぎ
ちゃったんだと思う。
ここのところ、ずっとそうだ。
何だかもったいない。
辺りを見回して、
鼻をひくひくさせる。
しんちゃんの匂いはしない。
まだ、帰ってきてないんだ。
さっき寄せたはずのおちゃわんのご
はんが、新しくなっている。
お水も入れ替えられている。
のろのろと体を起こして、
お水をなめた。冷たい。
この調子なら、ごはんも食べられる
かと思って少しかじったけれど、
ダメだった。
口に中に広がるおにくの味がキモチ
ワルイ。思わず吐き出して、もう一
度ねころがる。
夢のなかは、とてもしあわせな世界
だった気がする。
僕はまた夢を見る。
しんちゃんと最後に話したのは、
いつだっただろう。
僕はしんちゃんを追いかけている。
しんちゃんはいつものあかいシャツ
ときいろいズボン。小さな手は僕と
同じくらい。
シロ、おて
シロ、おまわり
シロ、わたあめ
『ねえしんちゃん。僕はしんちゃん
が大好きだよ。』
『オラも、シロのこと、だいすきだ
ぞ。シロはオラの、しんゆうだ
ぞ!』
わたあめでいっぱいのせかいはいつ
もふわふわでいつもあったかで
いつまでもおいかけっこができる
いつまでも
また朝がきた。
でも、
その日はいつもと違っていて。
しんちゃんのお母さんが、
僕を車に乗せてくれた。
しんちゃんのお母さんの顔は、
気のせいか苦しそうだった。
車はまっ白なお家の前で止まって、
僕は抱きしめられたまま下ろされ
る。
そして一回り大きなふくろの中につ
められた。まっくらだ。どうしよう
か。
昔なら、びっくりしてあばれてし
まったかもしれない。
でも今は、そんな力も出ない。
とりあえず丸くなると、体がゆらゆ
らとゆれた。
それがしばらく続き、
次にゆれが収まって、
足もとがひんやりとしてくる。
いきなり辺りがまぶしくなった。
目をぱしぱしさせていると、
変なツンとした匂いがする手につか
まれ、持ち上げられる。
いっしゅんだけ体が宙に浮いて、
すぐに冷たい台の上に下ろされた。
まっ白い服を着た人が、
目の前に立っている。
そばには、しんちゃんのお母さん。
二人が何かを話している。
しんちゃんのお母さんが、
泣いている。
どうして泣いているのか解らないけ
れど、なぐさめなくちゃ。
でも、体が動かない。
またあの眠気がおそってくる。
起きていなきゃいけないのに。
なんとか目を開けようとしたけれ
ど、ひどく疲れていて。
閉じていく瞳を冷たい台に向けれ
ば、そこに映るのはうすよごれた毛
のかたまり。
なんて、みすぼらしくなってしまっ
たんだろう。
ああそうか、
僕がこんなになってしまったからな
んだ。
だからなんだ。
だからしんちゃんは、
僕に見向きもしないんだ。
おいしそうじゃないから。
あまそうじゃないから。
僕はもう、わたあめにはなれない。
わたあめ。
ふわふわであまあまの、くものかた
まり。
いちど地面に落ちたおかしは、
もう食べられないから。
どんなにぽんぽんはたいても、
やっぱりおいしそうには見えないよ
ね。
だけど、
君はいちど拾っててくれた。
だれかが落として、
もういらないって言ったわたあめ
を。
だから、もういいんだ。
何かにびっくりして、
僕はまた戻ってきた。
見なれた僕のお家。
いつもの匂い。
少しはだざむい、
ゆうやけ空。
口の中がしょっぱい。
「なんで!!!!!!」
いきなり、辺りに大声が響いた。
びりびりとふるえてしまうような、
いっぱいの声。
重たい体をひきずって、回り込んで
窓からお家の中をのぞきこむ。
しんちゃんのお父さんとお母さん、
ひまわりちゃん。
そして、
僕の大好きなしんちゃんも。
みんなみんな、泣いていた。
「母ちゃんの行った病院は、ヤブ
だったに決まってる!!
オラが、他の病院に連れてく
ぞ!!!」
しんちゃんが、ナミダをぼろぼろこ
ぼしながら、怒っている。
ひまわりちゃんも、うつむいたまま
顔を上げようとしない。
「しんのすけ、落ち着け。仕方ないんだ。」
しんちゃんのお父さんが、ビ?ルの
入ったコップをにぎりしめたまま呟
いている。
「仕方ないって、父ちゃんは…ホン
トにそれでいいの!!!???」
「良いわけないだろ!!!!!」
しんちゃん以上のその大きな声に、
だれもなにも言わなくなった。
その静かな中に、しんちゃんのお父
さんの低い声が、ゆっくりひびく。
「しんのすけ、良く聞け。いいか、
生き物は何時かは死ぬんだ。
それは、俺たちも同じだ。……も
ちろん、ひまやお前の母さんもそう
だ。
それが今。その時が、いま、来た
だけなんだよ。解ってたことだろ
う?」
しんちゃんは、なにも言わない。
しんちゃんのお母さんも、続ける。
「あのね、ママが最初ペットを飼う
のに反対したのはね、そう言う意味
もあるの。
しんちゃんに辛い思いをさせたく
なかったから…ううん。
私自身が、そんな辛いお別れをし
たくなかったから。だから、反対し
てたの。
でも、もうこうなっちゃった以
上、仕方ないでしょう?
せめて、最期を看取ってあげるこ
とが、私たちに出来る一番良い事
じゃないの?」
「最期って!!!」
しんちゃんが泣いている。
ぼろぼろ泣いている。
手をぎゅっとにぎりしめて。
僕よりもずっと大きくなってしまっ
た手を、ぎゅっとかたく。
僕の体のことは、たぶんだれよりも
僕自身が一番知っていて。
でも、いいと思っていた。
このままでもいいって。
だって夢の中はあんなにもあったか
くてあまくって。
だからずっとあそこにいても、
かまわないと思ってたんだ。
それじゃだめなの?
しんちゃんがこっちを見た。
しばらく目をきょろきょろさせたあ
と、僕を見付けて、顔をくしゃく
しゃにさせる。
「シロ。」
名前を呼ばれた。
本当に、ひさしぶりに。
わん。
なんとか声が出た。
本当に小さくて、
ガラスごしじゃあ聞こえないかと
思ったけれど。
でも、
たしかにしんちゃんには届いた。
しんちゃんが近付いてくる。
窓を開けて、僕に手をのばして。
「大丈夫、オラが、何とかしてやる
ぞ。」
やっと抱きしめ
てくれたしんちゃん
の胸は、いっぱいどくどく言ってい
て、
夢の中の何十倍も、
とってもあったかかった。
ねえ、よごれたわたあめでも。
僕は夢を見る。
何度目になるかはわからない夢。
でも、それは今までとはちがう夢。
僕は段ボール箱に入っていて、
そのはじをしんちゃんがヒモで三輪
車に結びつけている。
三輪車がいきおいよく走る。
箱ががたがたゆれて、
ちょっときもちが悪い。
ふいに、その箱から引っぱり出さ
れ、僕は自転車のかごに乗せられ
た。
小さな自転車。運転しているのはし
んちゃん。せなかにはまっ黒なラン
ドセル。
シロに一番に見せてやるぞって、
嬉しそうにしょって見せてくれたラ
ンドセル。
まだまだ運転は下手だったけど、
とってもあたたかかった、
春。
自転車のかごが一回り大きくなる。
くるりとまわると、
しんちゃんが今度は、
まっ白なシャツを着ていた。
自転車も、新しくなっている。
もうよたよたしていない。
スピードも、速い。
そういえば、
よくお母さんに怒られたとき、
ナイショだぞって僕を、
こっそりフトンの中に入れてくれた
よね。
もちろん次の日には、
お母さんに怒られるんだけど、
それでもやめなかった。
二人だけのヒミツがあった、
きらきらしてまぶしい、
夏。
ぼんやりしていたら、
ひょいっとかごから下ろされた。
代わりに自転車を押しているしん
ちゃんのとなりに並んで歩く。
しんちゃんはずいぶん背が伸びて、
お父さんと変わらないくらいになっ
た。
お母さんといっしょに使っている自
転車が、ぎしぎしと音を立てる。
でも、
どんなに大きくなっても、
きれいな女の人に目がいくのは変わ
らない。
こまったくせだなあと思いながら
も、どこか安心してる僕がいる。
いつまでも変わらないでいて欲し
かった、少しだけ乾いた風が吹く、
秋。
寒い冬。
あんまり話してくれなくなった。
おさんぽも、少なくなって。こっち
を見てくれることも少なくなった。
見えるのは横顔だけ。
楽しそうな、悲しそうな。
ぼんやりした、困った。
怒っているような、
悩んでいるような。
そんな、横顔だけ。
寒い冬。
小屋の中で、ひとりで丸く
なっていた、
冬。
寒かった冬。
でも、冬は春への始まり。
あたたかな春への始まり。
僕は丸まって、
わたあめのようになって、
あったかいうでの中で。
春の始まりをまっている。
たとえそれがほんのいっしゅんのも
のでも。
かしゃん、という、なにかがたおれ
る音がして、僕は目を開けた。
電灯がぽつりぽつりとついた、暗い
道の真ん中で、見なれた自転車が横
になっている。
のろのろと首を上げると、
しんちゃんの前髪が顔に当たった。
道のはじっこのカベに、もたれかか
るようにしてしゃがみ込むしんちゃ
ん。
その体はひっきりなしにふるえてい
て、とても寒そうだった。
僕を抱きしめたまま、動こうとしな
いしんちゃん。
しんちゃんに抱きしめられたまま、
動くことができない僕。
ああだれか僕の代わりに、しんちゃ
んを抱きしめてあげて。
「ごめんな、ごめんなシロ。オラ、
何にも出来なかった。」
ぽつりぽつりと、しんちゃんが話し
かけてくれる。
「いっぱい病院回ったんだ、
でも、どこも空いて無くて。
空いてるトコもあったんだけど、
大抵シロを一目見ただけで…何も。
あいつらきっとおばかなんだぞ。
おばかだから、何にも出来ないん
だ。」
しんちゃん、泣いてるの?
ねえ、泣かないで。
「でも、ホントにおばかなのは……
オラだ。」
しんちゃんなかないで。
「オラっ……シロがこんなになって
るの、気付かなくて…!!
ずっと、一緒にいたのに…親友
だって……思ってたのに、なの
に!!!」
なかないで、もういいから。
「シロっ…………。」
しんちゃんが泣いている。
僕はなにもできない。
せめて元気なところを見せようと
思って、
僕はしんちゃんのほっぺたをなめ
た。
しんちゃんのほっぺたは、
少しだけ早い春の味。
僕がメスだったら、しんちゃんのた
めに子供を作っただろう。
僕が居なくなっても、
寂しくないように
僕がわたあめだったら、
しんちゃんのためにせいいっぱい甘
くなっただろう。
僕が食べられても、
甘さが少しでも長く口にのこるよう
に。
僕が人間の手を持っていたら、
しんちゃんを抱きしめただろう。
僕がしんちゃんにもらった、
温もりを返すために。
僕が人間の言葉をしゃべれたら。
きっと、
いっぱいいっぱいのありがとうと
大好きを、君に。
ひっきりなしにこぼれるナミダをな
めながら、僕はあることに気が付い
た。
僕はここを、今しんちゃんがすわり
こんでいるここを、知っている。
ここは、
僕と君が初めて会ったところ。
僕と君との、始まりの場所。
僕は待っていた。
あきらめながらも、いつか。
いつか、おっこちたわたあめでも。
おいしいそうだって言ってくれる人
が。
ひろいあげて、ぱんぱんってして。
まだ食べられるぞって、
言ってくれる人が、
来てくれるって。
「シロ。」
名前をよばれて、
僕は顔を上げる。
しんちゃんが、
笑っていた。
まだまだナミダでいっぱいの顔で、
それでも笑っていた。
「シロ、くすぐったいぞ。
そんなにオラの涙ばっか舐めてた
ら、しょっぱい綿飴になるぞ。
しょっぱいシロなんて、
美味しそうじゃないから。
だからシロ、
オラ、
待ってるから。
今度はオラが待ってるから。」
しんちゃん。
「だから、もう一度、
美味しそうな綿飴になって。
そんでもって、
戻ってくるんだぞ。」
だいすき。
ぼくはしんちゃんに抱きしめられな
がら、さいごの夢を見る。
もういちど、わたあめになる夢を。
もういちど、おさとうになって、
とかされて。
くるくるまわって、
あまい、あまいわたあめになる。
目ざめたときに、だれよりも、
君がおいしそうだって言ってくれる
わたあめになるために。
ふわふわのわたあめ。
さくら色の、
あったかなわたあめ。
君が大好きだっていうキモチをこめ
た、
君だけのわたあめ。
僕はシロ、しんちゃんの心友。
十三年前に拾われた、一匹の犬。
まっ白な僕は、
ふわふわのわたあめみたいだと言わ
れて。
おいしそうだから、
抱きしめられた。
僕はシロ、
しんちゃんのしんゆう。
今度はさくら色の、
ふわふわのわたあめになって。
君に、会いに行くよ。
「13年後のクレヨンしんちゃん」
知っている方も多いと思いますが
一昔前まえに話題になった
泣ける2ちゃんねる
の1つです。
あのクレヨンしんちゃんの
13年後を書いた
超感動のお話(T_T)
俺がリスペクトした
超ホットな感動作をみれば?w
「13年後のクレヨンしんちゃん」
僕はシロ、しんちゃんのともだち。
十三年前に拾われた、一匹の犬。
まっ白な僕は、ふわふわのわたあめ
みたいだと言われて。
おいしそうだから、抱きしめられ
た。
あの日から、ずっといっしょ。
「行ってきマスの寿司??????。」
あいかわらずの言葉といっしょに、
しんちゃんは家から飛び出していっ
た。
まっ黒な上着をつかんだまま、口に
食パンをおしこんでいるところを見
ると、
今日もちこくなんだろう。
どんなに大きな体になっても、声が
低くなっても、朝に弱いのは昔か
ら。
特に今年は、しんちゃんのお母さん
いわく『ジュケンセイ』というやつ
だから、
さらにいそがしくなったらしい。
たしかに、ここのところのしんちゃ
んは、あんまり僕にかまってくれな
くなった。
しかたのないことだとしても、なん
だかちょっと、
うん。
さみしいかもしれない。
せめてこっちを見てくれないかな、
と言う気持ちと、がんばれという気
持ち。
その二つがまぜこぜになって、とに
かく少しでも何かしたくなって。
小さくほえてみようとしたけれど、
出来なかった。
なんだかとても眠たい。
ちかごろ多くなったこの不思議な感
覚、ゆっくりと力が抜けていくよう
な。
あくびの出ないまどろみ。
閉じていく瞳の端っこに、しんちゃ
んの黄色いスニーカーが映って。
ああ今日もおはようを言い損ねた
と、どこかで後悔した。
ぴたぴたとおでこを触られる感覚
に、急に目が覚める。
いっぱいに浮かんだ顔に、おもわず
引きぎみになった。
ひまわりちゃんだ。
「シロー。朝ご飯だよ。」
そう言いながらこちらをのぞき込ん
でくる顔は、しんちゃんに似てい
て。
やっぱり兄妹なんだな、と思う。
「ほら、ご飯。」
ひまわりちゃんは、片手で僕のおで
こをなでながら、もう片方の手でお
わんを振ってみせる。
山盛りのドッグフード。
まん丸な目
のひまわりちゃん。
あんまり興味のない僕のごはん。
困った顔のひまわりちゃん。
僕は、それをかわるがわる見なが
ら、迷ってしまう。
お腹は減っていない。
でも食べなければひまわりちゃん
は、もっと困った顔をするだろう。
でも、お腹は減っていない。
ひまわりちゃんは、
悲しそうな顔になって、
僕の目の前にごはんを置いた。
そして、
両手でわしわしと僕の顔をかきまわ
す。ちょっと苦しい。
「お腹減ったら、食べればいいよ。」
おしまいにむぎゅうっと抱きしめら
れてから、そう言われた。
ひまわりちゃんは立ち上がると、
段々になったスカートをくるりと回
して、
そばにあったカバンを持つ。
学校に行くんだ。
いってらっしゃいと言おうとしたけ
れど、やっぱり言う気になれなく
て。
僕はぺたんとねころんだ。
へいの向こうにひまわりちゃんが消
えていく。
顔の前に置かれたおちゃわんを、
僕は鼻先ではじに寄せた。
お腹は、ぜんぜん空いていない。
ごはんを欲しいと思わなくなった。
おさんぽにも、
あんまり興味はなくなった。
でも、
なでてもらうのは、
まだ好き。
抱きしめられるのも、好き。
『ジュケンセイ』っていうのが終
わったら、しんちゃんは。
また僕をいっぱい、
なでてくれるのかな。
抱きしめてくれるのかな。
そうだといいんだけど。
目を開くと、
もう辺りはうすむらさき色になって
いて。
また、
まばたきしているうちに一日が過ぎ
ちゃったんだと思う。
ここのところ、ずっとそうだ。
何だかもったいない。
辺りを見回して、
鼻をひくひくさせる。
しんちゃんの匂いはしない。
まだ、帰ってきてないんだ。
さっき寄せたはずのおちゃわんのご
はんが、新しくなっている。
お水も入れ替えられている。
のろのろと体を起こして、
お水をなめた。冷たい。
この調子なら、ごはんも食べられる
かと思って少しかじったけれど、
ダメだった。
口に中に広がるおにくの味がキモチ
ワルイ。思わず吐き出して、もう一
度ねころがる。
夢のなかは、とてもしあわせな世界
だった気がする。
僕はまた夢を見る。
しんちゃんと最後に話したのは、
いつだっただろう。
僕はしんちゃんを追いかけている。
しんちゃんはいつものあかいシャツ
ときいろいズボン。小さな手は僕と
同じくらい。
シロ、おて
シロ、おまわり
シロ、わたあめ
『ねえしんちゃん。僕はしんちゃん
が大好きだよ。』
『オラも、シロのこと、だいすきだ
ぞ。シロはオラの、しんゆうだ
ぞ!』
わたあめでいっぱいのせかいはいつ
もふわふわでいつもあったかで
いつまでもおいかけっこができる
いつまでも
また朝がきた。
でも、
その日はいつもと違っていて。
しんちゃんのお母さんが、
僕を車に乗せてくれた。
しんちゃんのお母さんの顔は、
気のせいか苦しそうだった。
車はまっ白なお家の前で止まって、
僕は抱きしめられたまま下ろされ
る。
そして一回り大きなふくろの中につ
められた。まっくらだ。どうしよう
か。
昔なら、びっくりしてあばれてし
まったかもしれない。
でも今は、そんな力も出ない。
とりあえず丸くなると、体がゆらゆ
らとゆれた。
それがしばらく続き、
次にゆれが収まって、
足もとがひんやりとしてくる。
いきなり辺りがまぶしくなった。
目をぱしぱしさせていると、
変なツンとした匂いがする手につか
まれ、持ち上げられる。
いっしゅんだけ体が宙に浮いて、
すぐに冷たい台の上に下ろされた。
まっ白い服を着た人が、
目の前に立っている。
そばには、しんちゃんのお母さん。
二人が何かを話している。
しんちゃんのお母さんが、
泣いている。
どうして泣いているのか解らないけ
れど、なぐさめなくちゃ。
でも、体が動かない。
またあの眠気がおそってくる。
起きていなきゃいけないのに。
なんとか目を開けようとしたけれ
ど、ひどく疲れていて。
閉じていく瞳を冷たい台に向けれ
ば、そこに映るのはうすよごれた毛
のかたまり。
なんて、みすぼらしくなってしまっ
たんだろう。
ああそうか、
僕がこんなになってしまったからな
んだ。
だからなんだ。
だからしんちゃんは、
僕に見向きもしないんだ。
おいしそうじゃないから。
あまそうじゃないから。
僕はもう、わたあめにはなれない。
わたあめ。
ふわふわであまあまの、くものかた
まり。
いちど地面に落ちたおかしは、
もう食べられないから。
どんなにぽんぽんはたいても、
やっぱりおいしそうには見えないよ
ね。
だけど、
君はいちど拾っててくれた。
だれかが落として、
もういらないって言ったわたあめ
を。
だから、もういいんだ。
何かにびっくりして、
僕はまた戻ってきた。
見なれた僕のお家。
いつもの匂い。
少しはだざむい、
ゆうやけ空。
口の中がしょっぱい。
「なんで!!!!!!」
いきなり、辺りに大声が響いた。
びりびりとふるえてしまうような、
いっぱいの声。
重たい体をひきずって、回り込んで
窓からお家の中をのぞきこむ。
しんちゃんのお父さんとお母さん、
ひまわりちゃん。
そして、
僕の大好きなしんちゃんも。
みんなみんな、泣いていた。
「母ちゃんの行った病院は、ヤブ
だったに決まってる!!
オラが、他の病院に連れてく
ぞ!!!」
しんちゃんが、ナミダをぼろぼろこ
ぼしながら、怒っている。
ひまわりちゃんも、うつむいたまま
顔を上げようとしない。
「しんのすけ、落ち着け。仕方ないんだ。」
しんちゃんのお父さんが、ビ?ルの
入ったコップをにぎりしめたまま呟
いている。
「仕方ないって、父ちゃんは…ホン
トにそれでいいの!!!???」
「良いわけないだろ!!!!!」
しんちゃん以上のその大きな声に、
だれもなにも言わなくなった。
その静かな中に、しんちゃんのお父
さんの低い声が、ゆっくりひびく。
「しんのすけ、良く聞け。いいか、
生き物は何時かは死ぬんだ。
それは、俺たちも同じだ。……も
ちろん、ひまやお前の母さんもそう
だ。
それが今。その時が、いま、来た
だけなんだよ。解ってたことだろ
う?」
しんちゃんは、なにも言わない。
しんちゃんのお母さんも、続ける。
「あのね、ママが最初ペットを飼う
のに反対したのはね、そう言う意味
もあるの。
しんちゃんに辛い思いをさせたく
なかったから…ううん。
私自身が、そんな辛いお別れをし
たくなかったから。だから、反対し
てたの。
でも、もうこうなっちゃった以
上、仕方ないでしょう?
せめて、最期を看取ってあげるこ
とが、私たちに出来る一番良い事
じゃないの?」
「最期って!!!」
しんちゃんが泣いている。
ぼろぼろ泣いている。
手をぎゅっとにぎりしめて。
僕よりもずっと大きくなってしまっ
た手を、ぎゅっとかたく。
僕の体のことは、たぶんだれよりも
僕自身が一番知っていて。
でも、いいと思っていた。
このままでもいいって。
だって夢の中はあんなにもあったか
くてあまくって。
だからずっとあそこにいても、
かまわないと思ってたんだ。
それじゃだめなの?
しんちゃんがこっちを見た。
しばらく目をきょろきょろさせたあ
と、僕を見付けて、顔をくしゃく
しゃにさせる。
「シロ。」
名前を呼ばれた。
本当に、ひさしぶりに。
わん。
なんとか声が出た。
本当に小さくて、
ガラスごしじゃあ聞こえないかと
思ったけれど。
でも、
たしかにしんちゃんには届いた。
しんちゃんが近付いてくる。
窓を開けて、僕に手をのばして。
「大丈夫、オラが、何とかしてやる
ぞ。」
やっと抱きしめ
てくれたしんちゃん
の胸は、いっぱいどくどく言ってい
て、
夢の中の何十倍も、
とってもあったかかった。
ねえ、よごれたわたあめでも。
僕は夢を見る。
何度目になるかはわからない夢。
でも、それは今までとはちがう夢。
僕は段ボール箱に入っていて、
そのはじをしんちゃんがヒモで三輪
車に結びつけている。
三輪車がいきおいよく走る。
箱ががたがたゆれて、
ちょっときもちが悪い。
ふいに、その箱から引っぱり出さ
れ、僕は自転車のかごに乗せられ
た。
小さな自転車。運転しているのはし
んちゃん。せなかにはまっ黒なラン
ドセル。
シロに一番に見せてやるぞって、
嬉しそうにしょって見せてくれたラ
ンドセル。
まだまだ運転は下手だったけど、
とってもあたたかかった、
春。
自転車のかごが一回り大きくなる。
くるりとまわると、
しんちゃんが今度は、
まっ白なシャツを着ていた。
自転車も、新しくなっている。
もうよたよたしていない。
スピードも、速い。
そういえば、
よくお母さんに怒られたとき、
ナイショだぞって僕を、
こっそりフトンの中に入れてくれた
よね。
もちろん次の日には、
お母さんに怒られるんだけど、
それでもやめなかった。
二人だけのヒミツがあった、
きらきらしてまぶしい、
夏。
ぼんやりしていたら、
ひょいっとかごから下ろされた。
代わりに自転車を押しているしん
ちゃんのとなりに並んで歩く。
しんちゃんはずいぶん背が伸びて、
お父さんと変わらないくらいになっ
た。
お母さんといっしょに使っている自
転車が、ぎしぎしと音を立てる。
でも、
どんなに大きくなっても、
きれいな女の人に目がいくのは変わ
らない。
こまったくせだなあと思いながら
も、どこか安心してる僕がいる。
いつまでも変わらないでいて欲し
かった、少しだけ乾いた風が吹く、
秋。
寒い冬。
あんまり話してくれなくなった。
おさんぽも、少なくなって。こっち
を見てくれることも少なくなった。
見えるのは横顔だけ。
楽しそうな、悲しそうな。
ぼんやりした、困った。
怒っているような、
悩んでいるような。
そんな、横顔だけ。
寒い冬。
小屋の中で、ひとりで丸く
なっていた、
冬。
寒かった冬。
でも、冬は春への始まり。
あたたかな春への始まり。
僕は丸まって、
わたあめのようになって、
あったかいうでの中で。
春の始まりをまっている。
たとえそれがほんのいっしゅんのも
のでも。
かしゃん、という、なにかがたおれ
る音がして、僕は目を開けた。
電灯がぽつりぽつりとついた、暗い
道の真ん中で、見なれた自転車が横
になっている。
のろのろと首を上げると、
しんちゃんの前髪が顔に当たった。
道のはじっこのカベに、もたれかか
るようにしてしゃがみ込むしんちゃ
ん。
その体はひっきりなしにふるえてい
て、とても寒そうだった。
僕を抱きしめたまま、動こうとしな
いしんちゃん。
しんちゃんに抱きしめられたまま、
動くことができない僕。
ああだれか僕の代わりに、しんちゃ
んを抱きしめてあげて。
「ごめんな、ごめんなシロ。オラ、
何にも出来なかった。」
ぽつりぽつりと、しんちゃんが話し
かけてくれる。
「いっぱい病院回ったんだ、
でも、どこも空いて無くて。
空いてるトコもあったんだけど、
大抵シロを一目見ただけで…何も。
あいつらきっとおばかなんだぞ。
おばかだから、何にも出来ないん
だ。」
しんちゃん、泣いてるの?
ねえ、泣かないで。
「でも、ホントにおばかなのは……
オラだ。」
しんちゃんなかないで。
「オラっ……シロがこんなになって
るの、気付かなくて…!!
ずっと、一緒にいたのに…親友
だって……思ってたのに、なの
に!!!」
なかないで、もういいから。
「シロっ…………。」
しんちゃんが泣いている。
僕はなにもできない。
せめて元気なところを見せようと
思って、
僕はしんちゃんのほっぺたをなめ
た。
しんちゃんのほっぺたは、
少しだけ早い春の味。
僕がメスだったら、しんちゃんのた
めに子供を作っただろう。
僕が居なくなっても、
寂しくないように
僕がわたあめだったら、
しんちゃんのためにせいいっぱい甘
くなっただろう。
僕が食べられても、
甘さが少しでも長く口にのこるよう
に。
僕が人間の手を持っていたら、
しんちゃんを抱きしめただろう。
僕がしんちゃんにもらった、
温もりを返すために。
僕が人間の言葉をしゃべれたら。
きっと、
いっぱいいっぱいのありがとうと
大好きを、君に。
ひっきりなしにこぼれるナミダをな
めながら、僕はあることに気が付い
た。
僕はここを、今しんちゃんがすわり
こんでいるここを、知っている。
ここは、
僕と君が初めて会ったところ。
僕と君との、始まりの場所。
僕は待っていた。
あきらめながらも、いつか。
いつか、おっこちたわたあめでも。
おいしいそうだって言ってくれる人
が。
ひろいあげて、ぱんぱんってして。
まだ食べられるぞって、
言ってくれる人が、
来てくれるって。
「シロ。」
名前をよばれて、
僕は顔を上げる。
しんちゃんが、
笑っていた。
まだまだナミダでいっぱいの顔で、
それでも笑っていた。
「シロ、くすぐったいぞ。
そんなにオラの涙ばっか舐めてた
ら、しょっぱい綿飴になるぞ。
しょっぱいシロなんて、
美味しそうじゃないから。
だからシロ、
オラ、
待ってるから。
今度はオラが待ってるから。」
しんちゃん。
「だから、もう一度、
美味しそうな綿飴になって。
そんでもって、
戻ってくるんだぞ。」
だいすき。
ぼくはしんちゃんに抱きしめられな
がら、さいごの夢を見る。
もういちど、わたあめになる夢を。
もういちど、おさとうになって、
とかされて。
くるくるまわって、
あまい、あまいわたあめになる。
目ざめたときに、だれよりも、
君がおいしそうだって言ってくれる
わたあめになるために。
ふわふわのわたあめ。
さくら色の、
あったかなわたあめ。
君が大好きだっていうキモチをこめ
た、
君だけのわたあめ。
僕はシロ、しんちゃんの心友。
十三年前に拾われた、一匹の犬。
まっ白な僕は、
ふわふわのわたあめみたいだと言わ
れて。
おいしそうだから、
抱きしめられた。
僕はシロ、
しんちゃんのしんゆう。
今度はさくら色の、
ふわふわのわたあめになって。
君に、会いに行くよ。
はい

