ソファに仰向けで寝っ転がったその人は、長い手足をだらりと投げ出し、僕が座る隙間すら与えてくれなかった。
 持ち主である以前に家主でもある彼に文句は言えまい。だけど、|客人《僕》をほっぽって眠りこけるのはどうなのか。
 そんな、ぞんざいな扱いが面白くなかった僕は、彼の胸に手をついて無理矢理にのしかかってみる事にした。
 小さな子供が父親のお腹に乗るように、けれど肺や胃を圧迫しないように、下腹部辺りに腰を降ろす。胸についていた手に体重が傾かないよう注意をはらって覗き込んだその寝顔は……なんというか、悔しいけれど様になっていた。
 伏せられた瞼を縁取る睫毛に、落とされた影の深さに、その顔を隠す銀髪の美しさに、僕は知らずのうちに息を呑んでいる。暫くそうしているとやはり多少は苦しいのか、瞼がゆっくりと開かれ、隠れていた紺碧と視線が合った。
 お前は何をやっているんだ、と唇が動く。
「座るところを占領されているからね」と返すと、まだぼんやりしているだろう眠り姫サマは僕と天井を交互に見遣った。そこに夢と現実の境を探しているのか、暫くするとまたこちらに視線を戻し、まさかの、欠伸混じりの馬鹿を口にするのだから驚きだ。
「……ベッドなら広いぞ」
 ぐり、と重心が揺らされる。
 座り込んでいた下腹部に寝起き特有の反応を押し付けられ、反射的に僕は彼の額をぴしゃりと叩いていた。
「寝言なら寝て言って」
「なら、あと少しだけ寝かせてくれ……」
 とろとろと溶ける語尾。
 異変に気付いて再び顔を覗き込むも、肝心の彼は瞼を降ろしていて、紺碧はもう見えなくなっていた。
「……なにそれ」
 顔が熱い。頭の中に変な靄が掛かっていく。
 押し付けられていた箇所が、知らない毒に侵されてじんじんと疼く。





 ソファに仰向けで寝っ転がったその人は、長い手足をだらりと投げ出し、僕が座る隙間すら与えてくれなかった。
 持ち主である以前に家主でもある彼に文句は言えまい。だけど、|客人《僕》をほっぽって眠りこけるのはどうなのか。
 ぞんざいな扱いが面白くなかった僕は、彼の胸に手をついて無理矢理にのしかかってみる事にした。
 小さな子供が父親のお腹に乗るように、けれど肺や胃を圧迫しないように、下腹部辺りに腰を降ろす。胸についていた手に体重が傾かないよう注意をはらって覗き込んだその寝顔は、なんというか、悔しいけれど様になっていた。
 伏せられた瞼を縁取る睫毛に、落とされた影の深さに、その顔を隠す銀髪の美しさに、僕は知らずのうちに息を呑んでいる。暫くそうしているとやはり多少は苦しいのか、瞼がゆっくりと開かれ、隠れていた紺碧と視線が合った。
 何をやっているんだ、と唇が動く。
「座るところを占領されているからね」と返すと、まだぼんやりしているだろう眠り姫サマは僕と天井を交互に見遣る。
 そこに夢と現実の境を探しているのか、暫くするとまたこちらに視線を戻し、まさかの、欠伸混じりの馬鹿を口にしたのだから驚きだ。
「……ベッドなら広いぞ」
 ぐり、と重心が揺らされる。
 座り込んでいた下腹部に寝起き特有の反応を押し付けられ、反射的に僕は彼の額をぴしゃりと叩いていた。
「寝言なら寝て言って」
「なら、あと少しだけ寝かせてくれ……」
「なにそれ……へ?」
 とろとろと溶ける語尾。
 異変に気付いて再び顔を覗き込むも、肝心の彼は瞼を降ろしていて、紺碧はもう見えなくなっていた。
 顔が熱い。頭の中に変な靄が掛かっていく。
 押し付けられていた箇所が、遅効性の弛緩剤でも打たれたように、じんじん疼く。