つづきです










この日も、ニノに繋がる情報を得ることは出来なかった。


大きな駅から比較的近い公園。

その一角で開催されていたフリーマーケットで、描いたイラストを展示販売しながら、訪れたお客さんや出店している人たちにニノの絵を見せてみたのだけれど…

やはり、見たことがあると言う声は聞くことが出来なかった。


ニノのキレイな顔は、人を惹きつける。一度見たら、どこか記憶に残っているだろう。

昨日、今日と二日間にわたり、公園やその周辺にいた かなり多くの人に声を掛けたから、多分…ニノはこの近くにはいないのだろうと判断した。


自分のスペースを片付けながら、今日も広げた地図にバツ印を書き込んでいく。



「元気にしてるかな…」



空を見上げ、つぶやいた。







ニノと離れてから二つの季節が通り過ぎ

東京の街は、すっかり煌びやかなイルミネーションに彩られていた。

あちらこちらで流れるクリスマスソング。


おれは、着ていたダウンの首元をきゅっと閉める。



「今日はどこに行こうかな」


冷たい風に身体をブルっと震わせ、バツ印の増えた地図をポケットにしまった。



週末になればイベントもあるのだけれど、平日はそれも無くて。

そんな時、おれは商店街を回って歩いていた。

ここは、なんか…とても温かい。

下町の雰囲気っていうのが、おれには合っているようだ。

…きっと、ニノも好きだと思う。



「ごめんね、見たことないわ」


「そうですか、ありがとうございます」



商店街の入り口から何件も聞いて回ったが、誰からも同じ答えしか返ってこない。

でも、もう…それにも慣れてしまった。


今日もダメかと諦めかけた時、あれ?と後ろで声がした。

振り返ると、髭を蓄えたダンディな先輩が。



「あの…この人探してるんですけど、見たことあります?」


「うーん、どこかで見たことある気がするんだけどなぁ。…どこだったか」


「お願いします。何とか思い出して下さい!」



しばらくその場で考え込んでいた男性だったが…



「どうも最近物忘れがひどくてね。

まぁ、そのうち思い出すかも知れないから、うちで茶でも飲んでいったらどうかね」


「はい、ぜひ!!」



初めて出会った手がかりを手放すものかと

おれは藁にもすがる思いで、おじいさんの後を追った。






つづく


miu