大宮のお話になります。

創作ですので、細かい部分はツッコまずにお読みください( ・∇・)











「あ、来た」


ここは、地方の小さなラジオ局。
通りに面した一階部分には、公開放送に使用するガラス張りのサテライトスタジオ、ニ階部分には通常使用のスタジオが設けられている。
そして、ここ三階には狭いスペースに編成部や営業部、アナウンス室がひしめき合っていて、そのすみっこの窓際に…
ちょっとした休憩スペースが設けられていた。
置かれた自動販売機には、コーヒーがずらりと並ぶ。寝不足が当たり前のオレたちには、必要不可欠の存在だった。

毎日の生放送が終わり、もう一仕事して…
この場所でコーヒーを飲むのが、オレのルーティンだった。


春の桜

夏の深緑

秋の銀杏

冬の葉牡丹


季節ごとに変わる ここからの景色を見るのが、オレのお気に入り。

そして、もう一つ。

駅前の…
人通りは多くはないが、それでも一応は大通りと称する道路の反対側にある、真っ赤なポスト。
そこに毎日ほぼ同じ時間に現れ、郵便物を投函する人がいた。

ちょっぴり ブサかわなワンコを連れて。

整った顔立ちをしてるのに、派手派手しくなくて、なんて言うのか…絶妙に雰囲気が地味なんだよね。めたんこ猫背だし。
それでいて、ふわふわな髪はぴょこんと後ろが跳ねていて、歩くたびに右に左に揺れている。それがアヒルのお尻みたいで可愛い。

でもあの人、見ていてハラハラするんだよね。目を開きながら寝てるんじゃないの?
あぁ、ほら。危ない。
ワンコが足元にじゃれついて、ぐるぐるぐる。リードが絡んじゃってるのに、気づかず歩こうとするから、やっぱりコケた。笑

尻もちをついた"さすらいのポストマン(仮)"は何事もなかったかのように立ち上がると、ぽんぽんと穿いていたジーンズを払った。

そして、手に持っていた…ハガキ、かな?
それをいつも通り投函すると、一生懸命に拝んでいる。

…あの人、懸賞生活でもしてるのかな?

オレは、昔どこかで見た番組を思い出し、くすくすと笑っていた。


「ニノ、打ち合わせするよ?」
「はーい」


番組ディレクターのまっさんに呼ばれ、オレは心の中で(また明日ね)と呟いた。



つづく



miu