一瞬、潤くんは大きく瞳を見開き
そしてふわり…と大輪の花を咲かせた。
「確かに!賑やかそうな人だな。笑
そっか…良かった。ニノが幸せで」
「ふふ、お互いにね」
「でも…」
一度言葉を切り、潤くんは少しだけ寂しそうに視線を下げた。
「でもさ、それなら真っ先に…俺に言って欲しかったな」
…?
あぁ、そうか。
多分潤くんは、オレが相葉さんって恋人が出来たことを言い出せなくて、悩み、自分の前から姿を消した…と思っているんだろう。
正解ではないけど、間違ってもいない。ちょっと順番が逆なだけ。
だから、それで良いよ。
ってか、よく考えたら潤くんが愛のキューピッドなのよね。
何も告げずに引っ越したオレの元へと、転送されてきたハガキ。
しかもそれが間違ってまぁくんの部屋の郵便受けに入れられるというミラクル。
そんなことある?
でも、あのハガキのおかげで、オレはまぁくんと知り合うことができた。
こんなにも…満たされた。
それに、オレがアナタを好きだったってことは、今となっては知らなくて良い事実。
…だからね?
これは嘘じゃない。ちょっとした思いやりだから。
「ごめんね。
大事な恋人を、隠しておきたかったの」
オレは、甘ーいオーラを惜しげもなく振り撒きながら、ぱちりとウインクした。
そんなオレのセリフに、潤くんは信じられないといった表情を浮かべた。以前のオレは、こんな歯の浮くようなセリフを言うようなキャラじゃ無かったから。どちらかと言えば、あえて言葉にしないタイプ。
それでもその変化をすぐに察して返してくる反応の良さは、さすがとしか言いようがない。
へぇもう隠さなくて良いんだ?と面白がって笑みを浮かべるから、だってあの人バタバタうるさいんだもん。全然大人しく隠れてくれないのよ と、口元を手で隠して肩を震わせた。
「なぁ。相葉さん呼んでこようか?撮影見たいんじゃない?」
「うん…でも、なるべく人は少ない方が良いと思うのよね。撮影って緊張するだろうし。それに、時間かけずに撮りたいから」
「そっか。だったら、今度三人で一緒に飲もうぜ。ちゃんと紹介してよ」
「ふふ。言っとく」
「二宮さん、準備できました」
潤くんとふたり、顔を見合わせて笑っていると、準備の整った今日の主役が登場した。
ゆるく編み込まれた長い髪が胸元で揺れ、上下に分かれたラベンダー色のドレスからは大きなお腹が張り出している。
元々綺麗な人だったけど、以前より表情が柔らかくて、神々しくすらあった。
潤くんが気遣うように寄り添う。
「二宮さん、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。
身体に負担をかけないよう、なるべく早く撮影を終わらせますので。あ…気分がすぐれなかったら、すぐに言ってくださいね」
オレは、カメラへと手を伸ばした。
つづく