つづきです









まぁくんの身体がグラリと揺れて…


自分よりひとまわり大きなその身体を支えようと、その腕の中で身構えた。



「…ごめん。ちょっとだけ良い?」



そう言うと、まぁくんは 

オレを ぎゅっ…と抱きしめた。


…熱は、無さそう。

なんならオレの方が少し熱いくらい。

気持ち悪いのかな?

やっぱりまだ調子が悪いんじゃ。


しばらく様子を伺っていたけれど、まぁくんは無言のままで。

身長差で、ちょうど…

甘い吐息に耳をくすぐられる。



「あの…まぁくん、どうしたの?」



少し…身体を捩ると、まぁくんの表情がチラリと見えた。

何か思い悩んでいるような表情に胸が痛くなる。

でも、オレには思い当たる節がなくて…


…って、まさか。



「あ、もしかして…そんなにビール飲みたかったの?!」



飲みたい気持ちは分かるけど、今は風邪を治すのが最優先。アルコールは控えなきゃね。



「でもやっぱりダメよ。今日は我慢してね」



お願いするようにまぁくんを見上げて、シャツの裾をキュッて握ったら、違うよって。

え、ビールじゃないの?

じゃあ…やっぱり具合が悪いのかと顔を上げると

思いがけない言葉が降ってきた。



「どうしたらニノと恋人になれるのかなって…ずっとそう考えてたところ。

オレと付き合ってください…って言ったら、恋人になれるかな?」



…え、と。

あれ、ちょっと待って。

オレたちってまだ付き合って無かったの?

じゃあ、あの合鍵にも特別な意味なんてなくて…オレが勝手に勘違いしてただけなのかな。


恋人気取りで浮かれていた気分が、空気の抜けた風船のように萎んでいく。



「もう付き合ってるって思ってたのはオレだけ?」


「へ?」


「だって、キス…したじゃん」



精一杯の反論。


まぁくんはあのキスを何だと思ってたのよ。

ちょっと悔しくて…まぁくんの顔を睨むように見上げた。



「だって、オレはニノに好きだよって言ったけど、ニノからは言われてなくて…」



言い訳のように、慌てて言葉を続けるから

オレも「言ったもん」って口を尖らせた。


本当よ。確かに言いました。嘘じゃありません。

…そうしたら、まぁくん ったら焦った様子で頭を抱えていて。思い出せないって、ブツブツ言っている。


ふふ。

ふふふふ。



「…まぁ、まぁくん寝てたけどね」



そう白状すると

「そんなのノーカウントだよ。もう一回言って?」って。


「/// いや、急に言われても、心の準備が」



反撃してきたまぁくんに、ノックアウト寸前。

また熱が上がったのかと勘違いするくらい、顔が熱くて。きっと真っ赤になってるんだろうなぁ。

って、あぁ。ほら。

まぁくんったら、ニヤニヤニヤ。

楽しそうにオレを見つめてる。



「もう良いよ」



もう一度抱き寄せられて…



3度目のキスは

まぁくんからだった。





つづく



miu