つづきです








触れるだけのキスをして


そっと…唇を離すと、まぁくんは目をまん丸に見開いていた。


//////う。何よもう。

そんなに見られたら穴が開くわ。

恥ずかしくて下を向けば、追いかけるように覗き込んでくる。

あぁ、もう。うるさいうるさいうるさい。

…何も言ってはいないけど、アナタの顔がうるさいのよ。


今のは何?キスしたの?何で?どういう意味?


まぁくんの目が、そう聞いてくる。


そうよ、キスしたの。アナタが好きだから。

心の中でそう答えると、まぁくんのキラキラな瞳は 更に輝く。


ねぇ、もう一回。


…っ///// 

もう、調子に乗るんじゃありません。

テンション上がって忘れてるかもしれないけど、アナタ熱出してるんだからね?



「病人なんだから大人しく寝てなさい」



これ以上興奮させないように 声のトーンを押さえてピシャリと言ってやった。

だって…様子を見れば、ベッドの上のまぁくんは、ハァハァと荒い息を吐き出している。

やっぱり熱で辛いのだろう。


ちょっと待っててね と声をかけ、近所のコンビニまで走った。

薬や冷えピタなんかは、まぁくんが買ったものが部屋にあったけれど…

残念ながら、オレにはお粥を作れるスキルがない。スポーツドリンクやレトルトのお粥を買い込むと、自分の部屋を経由してまぁくんの部屋に戻った。

ハッ…ハァ

久しぶりこんなに走った。息が弾む。


あとは…着替えかな。


ベランダに干されていた洗濯物を確認すると、それはすでに乾いていて。その中からTシャツとジャージを外すと、息を整えて まぁくんの寝ている横へとしゃがみ込んだ。



「ごめんね、勝手に探しちゃったけど」



まぁくんの額には、大粒の汗が浮かんでいた。

着替えを手渡そうとするオレに、まぁくんは 「着替えさせてくれる?」って。

やっぱり…身体を動かすのもキツいんだ。


ゆっくりと上半身を起こしたまぁくんのワイシャツのボタンに手をかける。ひとつずつ外していき、その下に着ていたTシャツも脱がせた。


指先が、肌に触れる。


細く、それでいて しなやかな筋肉のついた身体は

キレイで…そして、とても熱かった。


…苦しそう。まぁくんを早く寝かせなきゃ。

そう思うのに、触れた…この手を離したくないなんて。そんなことを考えているうちに、自分の手の上からまぁくんの大きな手のひらが重ねられた。



「くふふ…冷たくて気持ち良い」



あ、そう…そうよね。


冷たい手が気持ち良いだけなのに、オレってば何をドキドキしてるのよ。

自分の勘違いが恥ずかしくて…触れていた手をサッと引っ込めた。



「ねぇちょっと。熱が上がったんじゃないの?」



誤魔化すように、着替えのシャツを頭から被せる。

必死に平静を装い…

遠慮なくスーツのズボンから足を引っこ抜き、代わりに肌触りの良い柔らかなジャージを穿かせると、ふわりと柔軟剤の香りがした。


お粥を食べさせ、薬を飲んだ まぁくんは

漸く、少し…落ち着いたみたい。


しっとりと汗で濡れた髪を撫でる。



「ここにいるからさ、眠っていいよ」



そう言うと、まぁくんは目を閉じて

すぐに…静かな寝息を立て始めた。


さっきは言えなかったけど…

今なら 言えるかな?



まぁくん好きよ と

小さな声で そう囁いて



二度目のキスをした。





しばらくの間、まぁくんの寝顔を眺めていたのだけれど…

次第に まぶたが重くなる。

いつの間にか眠ってしまっていたようで、気付いた時には オレはまぁくんの腕に抱かれていた。

え、なんで?

確か…ベッドの脇に座っていたはずなのに。

 

って…

あ。


男子にはお馴染みの…朝勃ち///

抗えない生理現象に 腰を引き、まぁくんの腕の中から抜け出そうとすると、きゅっ…て抱きしめられた。


なによ、アナタ起きてるんじゃない。


離して って言っても、まぁくんは離してくれなくて。逆に…その腕の力は強くなる。


そして、オレの腰にも固いものが当たって…



////// まぁくんも…なの?


…嬉しくもあったけれど、やっぱり恥ずかしくて。

オレは、まぁくんの腕の中からするりと抜け出した。







つづく



miu