つづきです










まぁくんの身体がぐらりと揺れた。


バランスを崩したのか、抱き合ったまま ふたり一緒にベッドの上へと倒れ込む。

一瞬、ヒヤリとしたけど…

まぁくんもオレも、怪我は無さそうだった。



「…そんなに嬉しかったの?」



そう聞けば、まぁくんったら太陽みたいな笑顔で「うん。嬉しい」って。

オレが呼び方をかえた理由をしきりに聞きたがるから…

照れ臭くて、つい アナタが自分でそう言ったからよって言ってしまった。


肩を落としたまぁくんの表情が暗くなる。


…あぁ、ほら。

こういうとこ。オレってダメだなぁ。


呼び方を変えたきっかけは、確かにアナタの言葉だったけどさ?

まぁくんの喜ぶ顔が見たくて、一生懸命 考えたのに、素直にそう言えない自分が嫌になる。


こんな可愛くないオレを…

なんで、まぁくんは好きだと言ってくれるんだろう。…女の子ですらないのに。



「…オレも一つ聞いて良い?

まぁくんはさ、何でオレのこと好きって思ってくたの?」


「何でって…」


「…だって、オレ男なのに。

アナタは、その…普通の人でしょ?」


「うーん…ニノが言う普通ってのが、同性に対して恋愛感情を持たない人を指しているのは分かる。

ニノと出会ってすぐに、友だちになりたいと思ったのは本当。そう言う意味では多分最初から好きだったんだと思う。

でも…オレ、あの写真の女性を元カノだと勘違いしたじゃない?

あの時ね、めちゃめちゃ嫉妬して落ち込んだの。

だって…勝てないじゃん。絶対に。

でもね、そう思った自分に対しては、あんまり…不思議に思わなかった。

ああ、オレはニノが好きなんだって。

声が聞きたくて、一緒に居たくて…笑ってほしくて。

でも、これって普通のことだよね」



まぁくんの言葉に

ジワリ…と、胸が熱くなった。


伝えることのできなかった


…伝えようとさえしなかった 潤くんへのコイゴコロを、オレは初めて…可哀想だと思えた。


"普通"という言葉に、一番囚われていたのは オレだったのかもしれないね。


好きだから一緒にいたい


…それだけのことだったのに。



「まぁくんの普通って…素敵だね」



オレも、アナタのように素直になれるかな。


触れたくて…

ベッドに近づき、まぁくんの手を握った。



「ねぇ、これも…普通なのかな。オレね、今すごくドキドキしてるの」



…起き上がったまぁくんの影が

オレの顔へと落ちる。


キスを待って 瞳を閉じた…のに、唇の触れた先は鼻。

え、ちょっと。

ここはキスするところでしょうよ。


何なのよって抗議の視線を向ければ、風邪うつしちゃうからって。真面目か。



「そんなの…元はオレの風邪なんだから大丈夫よ」



…ねぇ、これが返事。

オレも アナタが好きだよ。


自分の唇を まぁくんの唇に

そっと…押し付けた。






つづく



miu