つづきです
…夢、だよね?
繋がれた手
慈しむように…
そっと髪を撫でる指先
こんなにも幸せな時間が
とてもリアルとは思えなくて…
行ったり
来たり
オレは、夢と現実との狭間をゆらゆらと揺蕩っていた。
やがて、静かな眠りへと誘われかけた意識を
甘い…声が引き戻した。
「…相葉さん、って
いつまでそう呼ばれるんだろう」
そう
ぽつり…と呟かれた言葉に
意識はゆっくりと覚醒していく。
(…相葉さん、って呼ばれるの嫌なのかな。
ニックネーム?なら、あいばっち?アイバビエルとか。あ、もしかして下の名前で呼ばれたいのかも。
雅紀…?でも呼び捨てはさすがに…)
…熱のせいか考えが纏まらない。
なら、いっそ本人の意見を聞いた方が早いと、口を開きかけて…
次々と降り注ぐ、甘くて優しい声に
オレは、もう…動くことが出来なかった。
「オレさ、自分でもびっくりするくらいニノのこと好きみたい。日曜日がくるの、めちゃめちゃ待ち遠しくてさ。何を作ろうかなぁって。美味しいもの食べてニノが笑ってくれるのが楽しみなんだ。普段は休みが合わないけどさ、夏休みとか…少しまとまった休みが取れそうな時は、どこか遊びに行こうね。あ、いや泊まりで…とかそんなんじゃなくて/////
映画とか、買い物とか。
そういう何でもない事でいいんだ。ニノとふたりで一緒にいられたらそれだけでいい。
…そう、思っているんだけどさ。
やっぱり気になっちゃうんだよね。
あの人のことはどう呼んでたのかな、とか
まだ好きなのかな、とか。
ずっとニノの中に居続けて、オレが入り込む余地なんて1ミリも無いんじゃないかって。
そんなこと考えてたら、会社で心配されちゃった。相葉が何か悩んでるって。笑笑
いつか…
ニノの中で、特別な存在になれますように」
…自身に向けられた
あまりにも真っ直ぐで純粋な好意に
じわりと涙が込み上げていた。
(オレも相葉さんが好き)
そう…呟くのと同時に
相反する感情に揺り動かされる。
オレでいいの?
だって、相葉さん ノンケじゃない。
……もしかしたら、恋してると勘違いしてるだけ…かもしれない。
決して、相葉さんの言葉を…
気持ちを信じていない訳じゃない。
…でも、怖いのよ。
結局、オレは踏み出せないんだろうか。
…潤くんの時と同じように。
繋がれた手を
きゅっと…握り返した。
つづく
miu