つづきです









ねぇ、ちょっと待ってよ。オレ、パンツまでビショビショなのに。


オレの手を握ったまま、相葉さんはずんずんと部屋の中へと進んでいく。

かろうじて玄関で靴下は脱いだけど…

振り返れば、オレの後ろには濡れた足跡が点々とついて来ていた。


そんな状態だったから、てっきり風呂場に連れて行かれると思ったのに ここは部屋の中。これに着替えてって、相葉さんから着替えを渡された。


男同士だし、オレの裸なんて相葉さんは気にも留めないだろうけど…

オレはやっぱり気になるから。

くるりと後ろを向いて 相葉さんに背中を向けると、ピタリと張り付く服を何とか脱ぎ、手渡されたシャツに袖を通した。下着とジャージも乾いたものに穿き替える。



「あの…着替えたよ」



そう言って振り返ると、今度はタオルを被せられて頭をゴシゴシ。

あれ。ちょっと待って。

なんか…部屋が歪んで見えるんだけど、オレの気のせい?

そう思った瞬間、視界が縦から横へと変わった。

力強い腕から、柔らかなベッドの上へ。相葉さんに抱かれてベッドに寝かされたと理解するまで…少し時間がかかった。



「今、薬持ってくる。その前に何か食べたほうが良いよね」



…そうか、熱が。


漸く自分の状態に気づいたオレは

はぁ、と深く息を吐き出した。



数分後、相葉さんは 手に何かを持って戻ってきた。

ベッドに腰掛けると、器からスプーンで掬い上げたお粥をフーフーと冷ましている。



「食べられそう?」


「…ん」


「はい、あーん」


「いや、自分で食べられるから」


「ダーメ」



…恥ずかしかったから、むう って口を尖らせたけど。相葉さんは、当たり前のようにスプーンをオレの口の前に差し出すから。結局食べさせてもらっちゃった。

お粥が熱いせいか、それとも照れ臭いからか…

身体中から汗が吹き出していた。



…薬も飲んで、一息ついたから。


これ以上迷惑かけたくないし、何より…このままここにいると、相葉さんに風邪をうつしてしまうかもしれない。

(部屋に戻ろう)

重い身体を起こし、ベッドから下りようとしたところを相葉さんに止められた。



「オレさ、具合悪い時にひとりでいると…寂しくなっちゃうんだよね。で、どんどんネガティブになっちゃうの。だから…」


「…うん。ちょっと分かる」


「だからね、ニノがひとりじゃないと落ち着いて寝られないならしょうがないけど、そうじゃなかったら一緒に居させて?」


「相葉さん…」


「ダメかな」


「あの、あの。

でも…うつったら、嫌だし」


「大丈夫!オレ絶対に風邪引かないから」



…いや、どんな自信なのよ。


相変わらず、相葉さんが相葉さん過ぎて 笑いが込み上げる。


結局、お言葉に甘えてベッドを借りることに。

何だかオレって相葉さんに甘え過ぎじゃない?


アナタが優しいから

つい…甘えてしまうんだよね。


ころんと転がって、ベッドの上で背中を丸めた。


ひんやりとした手が重ねられ、そっと オレの手を包み込む。

…気持ち良い。

弱ってる時って、人恋しくなる…


この手を離さないで欲しくて

きゅっと…握り返した。



「…少しだけこうしてても良い?」



その答えを聞く前に、意識が途切れた。






つづく




miu