その後、相葉さんとは 交換したLINEでメッセージでのやり取りが続いていた。
ニノの休みはいつ?って。
うちのスタジオは基本 月曜が休みで、その他に隔週で火曜日が休み。まぁ、繁忙期は休みも関係ないけど。
聞けば、相葉さんは土日休みだとか。まぁ、一般的な会社はそうかもしれない。
お休みが合わなくて残念だねって そう返信したら、だったら日曜日にご飯作るから一緒に食べようって。
え、いいの?
ご飯に誘ってもらえたことがすごく嬉しくて。
オレは、日曜日が来るのが待ち遠しくて仕方なかった。
この日は特段忙しくもなく、撮影も予定通り夕方には全て終わっていた。
7時を過ぎ、閉店準備を始める。
ソワソワしながらも、オレは翌営業日の予約状況を確認して、機材をチェックし 片付けた。
「お疲れ様でした」
店長に挨拶をして店を出る。
足早に駅に向かうと、電車に乗り込んだ。
あれ…?
パラパラという音に顔を上げれば、雨粒が窓を濡らしている。
それは次第に強さを増し、激しく打ち付けていた。
…うわ、傘を持っていないや。
天気予報を見なかったことを後悔したが、今となってはもう遅い。
改札を出ると、雨足は更に強さを増していて、タクシー乗り場には傘を持たない人々が長い列を作っていた。ここでタクシーを待っていたら1時間以上かかるだろう。
普通に歩けば…
マンションまでは10分ほどの距離。
オレは迷わず走り出していた。
昼間は汗ばむくらいの暖かさだったのに、急激に気圧が下がったせいか、かなり冷え込んでいた。
雨に濡れた服が急速に体温を奪っていく。
途中から、濡れた身体が重くなり走ることも出来なくなってしまった。
もう少し。
あの角を曲がればマンションが見える。
俯き、のろのろと歩いているオレに、バシャバシャと駆け寄る足音が近づいてきた。
…え、どうしてここに。
「こんなに濡れちゃって。タクシー拾えばよかったのに」
「うん…そうなんだけど。タクシー待ちの列が凄かったのよ」
本当は、少しでも早く帰りたかったの なんて
心の中で呟いてみた。
通り過ぎる車のライトが、降りしきる雨に反射して、相葉さんの綺麗な横顔をキラキラと彩っている。
見惚れていたオレの手を取ると、ふたり足速にマンションへと戻った。
「あの、ありがとう」
そうお礼を言って、自分の部屋に戻ろうとするのに、握られた手はそのままで。
でも、ごめん。
ちょっと…調子悪いみたいなの。
ご飯はまた今度にしよう?
そう言おうとすると、コンコンと咳き込んでしまった。
つづく