つづきです












正直、友だちは多くなかった。



気をつかうのも

気をつかわれるのも嫌


一緒にいて、楽な相手 というのが

オレの中での大事な判断基準。



そして、嘘は…つきたくなくて。



…だから、そう言う意味では、潤くんはかなり前から友だちのカテゴリーからは外れてしまっていたのかもしれない。


相葉さんと友だちになりたいと、そう願った時点で、このことも いつか…正直に話そうとは思ってたんだ。


何でかな。


相葉さんなら、どんなオレでもまるっと受け止めてくれる気がして。

理解は出来なくても、そのままのオレで良いよって…そう言ってくれると勝手に思ってた。


でも、目の前の相葉さんは眉間にシワをよせて、深く考え込んでしまっている。


…オレの言葉が、アナタを困らせてしまったんだね。


優しいから…

もしかしたら、普通じゃないオレを理解できない自分を責めてしまっているのかもしれない。



…ごめん。


ごめんね。



「あの、やっぱり…気持ち悪い、よね。

相葉さんには隠し事したくなくて話しちゃったけど。ありがとう。相葉さんと話せて良かった。

じゃあオレ…帰るね」



オレは大丈夫。

だから、どうか…気にしないでね。


立ち上がったオレの手を、大きな手が掴み

「待って!」と、慌てたような相葉さんの声が部屋に響いた。



「違う。

えーっと…その、オレね?絆創膏…持ってたの!」



…いや、何の話?

全然思い出せなくて、視線を逸らしたまま俯いていた。



「オレさ、下で転んで擦りむいたことあったでしょ?ニノが傷の手当てしてくれて…」


「あぁ、うん」


「あの時、絆創膏持ってないってウソついたの。そうすればニノともっと一緒にいられると思って」


「…相葉さん?」


「ニノにTシャツを借りたのもそう。だって、借りれば、また返しに来られるから。ニノのところに行く理由が欲しかった。

…オレ狡いよね」



絆創膏のことは思い出したけど…

どうして持ってたのに持ってないって嘘をついたの?

一緒いたくて?

オレに会う理由が欲しくて?


頭の中にいくつものハテナが浮かんで…


…気づいたら、繋がれた手を きゅっと握り返していた。



ねぇ。相葉さんは、嫌じゃないの?


アナタは普通の人なのに

何で、こんな…オレの近くにいてくれるの?


戸惑い、混乱しているオレに、相葉さんは静かに言った。



「オレね?今…ニノの手を握って、ドキドキしてる。でもこれって普通だよね?」


「え、と…それは…」


「だって、好きな子の手を握ってるんだもん。緊張するよ」


「相葉、さん?」


「急がないから。だから…ニノの側にいても良い?」



" 友だちとしての距離感 " を 思い出そうとしていたはずなのに、全然思い出せなくて。


今は、ドキドキと うるさいくらいに鳴る胸を鎮めるのに必死だった。



つづく




miu