つづきです









誰も返事をすることのない部屋で 

ただいま と呟いた。


部屋の明かりをつけて、袋いっぱいのビールやつまみを 一旦冷蔵庫に避難させる。

ここを出る前にスイッチを入れておいた風呂は、もう沸いていた。相葉さんにもお風呂入ってから来なよって言ったから…

まだ、しばらくは来ないよね。


服を脱ぎ、頭と身体を洗って湯船に浸かると…また笑いが込み上げてきた。



本当、騒がしい人だよね。

気がつけば、相葉さんのペースに巻き込まれてる。

ふふ…でも、うん。

嫌いじゃないよ。



濡れた髪から ぽたりと落ちた水滴が、水面に輪を広げていくのを…

オレは、ぼんやりと眺めていた。



心も体もポカポカに温まり、風呂から上がった所でチャイムの音が。


ピンポン♪


え、待って。まさか。

オレは一度帰ってきて、洗濯機回して…

部屋の片付けとか風呂とかも用意してあったけど、相葉さん早すぎない?まだ15分も経ってないんですけど。

もしかしたら宅配便かもしれないと思い直し、慌ててタオルで身体を拭いて、パンツを穿こうとしたら湿っているケツに張り付くし。


あぁ、もうって独り言を言っていたら

ピンポン♪ピンポン♪って連打された。


いや、このせっかちな感じは間違いなく相葉さん。

チャイムの音すら、そっくりよ。

そんなに急かさないでよ。今行くから。


仕方ないから、背中なんて拭けてないまま、置いてあったTシャツを着るよね。ぅわ、気持ち悪い。

急いで玄関に向かうと、ドアを開けた。 



「アナタさ。早いのよ」



もしかして、お風呂もお言葉に甘えるつもり?

そう言おうかと思ったら、ふわりと香るウチとは違うシャンプーの香り…

ボディーソープかな?

あ、入ってきたのね。それにしても早いくない?



「ごめん、風呂入ってたんだ。出直してくる」


「あんまり早くてびっくりしただけよ」



どうぞ って壁に寄ったら、大きな身体を申し訳なさそうに小さく丸めちゃってさ。オレの前を通りながらまたごめんねって。そんなに何度も謝らなくても良いのに。

くすくすくす

アナタ謝り過ぎって言ってやった。




「仕事、お疲れさま」


「うん。でも全然元気だけどね」


「どれだけ体力有り余ってんのよ」


「とりあえずカンパーイ」



向かい合わせに座り、ビールの缶を合わせる。

残業してきたはずの相葉さんは、めちゃめちゃ元気で。

この人、本当に今の仕事が好きなんだろうなぁって


ちょっと羨ましく思った。





つつく




miu