つづきです
「…和也?」
腕の中でくたりと落ちてしまった
細く、しなやかな躰…
後先考えず無理させてしまったことを反省し、抱き上げ湯から出た。
左手の指先でバスタオルを引っ掛け、ふわりと巻きつける。その場で簡単に水気を拭うと、そのままベッドに向かった。起こさないよう、残った水滴を丁寧にタオルで拭き取り、寝かせてやわらかな肌を毛布で覆う。
濡れた髪をどうしようか悩んだが…
乾いたタオルで、優しく撫でた。
冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し
和也の眠っているベッドに戻り腰掛けると、ギシッと小さな音をたてた。
熱を持った頬に手を添えると
「ん…」と、甘い吐息を漏らし
薄く唇を開くから
手の中の水を口に含んで、そっと唇に押し当てた。
少しずつ…移すと、和也の喉がゴクリと鳴る。
飲み込んだのを確認すると、口の端から溢れた雫を舌で舐めとった。
部屋の中は、暖房を入れてある。
加湿器も部屋の隅で静かに白い蒸気を立ち昇らせていたから…
これなら風邪をひくことはないだろう 。
まだ湿っている前髪を撫で、耳にかける。
起きる様子のないことを確認して、キッチンへと向かった。
結局、夕食を摂らずに行為に耽ってしまった。気づけば腹の虫が自己主張を始めている。
きっと和也も腹を空かしているだろうから、目が覚めたときに食べられるものを用意しておこう。
刻んだ野菜でスープを作り、賞味期限がギリギリだった焼きそばをフライパンで炒める。
そういえば…
和也は、購買のパンが好きだったよなぁ。メロンパンとか焼きそばパンをよく昼休みに食ってた。
さすがに、コッペパンとはいかないが…
朝食用に買ってあった食パンで焼きそばを挟み込み、ラップで巻いてみる。もちろん紅生姜も挟んで。
出来上がったスープを 一口だけ飲んで…
おれは和也の元へと戻った。
…目が覚めたとき、隣にいてやりたかったから。
様子を見れば、和也はまだ気持ちよさそうに寝息を立てている。
このまま朝まで起きないかもしれない。それなら朝ごはんにすれば良いか。
起こさないよう、そっと…潜り込むと
和也の体温を感じながら、おれも目を閉じた。
つづく
miu