つづきです









「あの、盛り上がってるとこ…悪りぃんだけどさ」


こほん、と 
わざとらしい 咳払いの音が、静寂を破った。

唇が重なったのも つかの間…
大野さんの存在を思い出し、心臓が大きく跳ねる。


…オレたちは二人で生きる。
それで命が尽きたって構わない。


大野さんへ向き直ると、彼は眉間にシワを寄せ唇を尖らせていた。
やっぱ、首を突っ込むんじゃなかった…と、ブツブツと独りごちている。

不機嫌そうな
それでいて、情けないような…

なんとも 表現し難い表情で
はぁ、と 大きく溜息を吐いた。


「…それ本気で言ってる?」

「本気だよ」

「ニノは?それで良いのか?」

「………」



…重い沈黙に支配された部屋で
どれくらい そうしていただろう。

ゆっくりと…ニノが顔を上げた。



「………相葉さん、ありがと。大好きだったよ」


待って。

その顔は、


全てを受け入れ、覚悟したような
穏やかな表情

オレは胸の奥に広がる不安に、押し潰されそうになっていた。


「…ニノ、ダメだよ」

「大野さん、お願い」


オレを通り抜け、大野さんの前に立つ。



「……オレを消して」



ニノはもう…振り返らなかった。


大野さんの浅黒い手が、すっ と前に伸びる。
迎えるように差し出した ニノの白い手が、大野さんの手と重なり…


…そして、電気でも消すかように


揺らぎも
躊躇いも

余韻さえ なく








消した。








miu