つづきです。









考えろ。

考えろ、オレ。


こんなに…
脳みそが攣りそうなくらい、必死になって考えたのは初めてかもしれない。



おばあさんの望みは、ニノが長生きして 幸せになること。 

オレの望みだって そう。
ニノの幸せ。

長生きは…
もう死んでしまっている以上、事実は変えようがない。でも、幸せになる方法はきっとあるはず。

" 幸せになる " っていう おばあさんとの約束を果たせれば…
そうしたら、成仏だって出来るよね。


「ね、ニノ。ニノの幸せって何?」

「…え?」


逸らそうとする視線を、真っ直ぐ捕らえた。


「大事なことだから。本当のこと教えて?」

「……そんなの」


普通のことよ、 と

ポロポロと大粒の涙が頬を伝った。


「朝起きて
おはよう って言って
仕事したり、遊んだりして
美味しいご飯食べて
ビール飲んで

……好きな人と…

相葉さんと一緒にいられたら
それだけで、いいのに……」


…なんだ。

答えは、こんなにも簡単だった。

ニノの手を取り 
ぎゅっと握った。


「ね、オレを幸せにしてくれる?」

「ふ…ぇ、どういう…事?」

「ニノを幸せにするのが、オレの幸せなんだ。
…だから」


落ち止まない雫が、相変わらず頬を濡らしていた。


「一緒に…幸せになろうよ。オレの半分、ニノにあげる。
そんで、二人で成仏してさ?
幸せな人生だった って、お父さんとお母さんと…おばあさんに 胸張って会いに行こう!
もし 来るのが早すぎるって怒られたら、その時は二人で謝ればいいよ」

「ダメ!…そんなの絶対ダメ」

「好きだよ。オレがニノと居たいんだ」

「……や、相葉さん ずるい…」


これまでにも、何度か…
近づけた顔が キスをしそうな距離だったことはあった。

…それは偶然だったかもしれない。

でも、今…
明確な意志をもって 顔を近づける。



…触れることのない唇が、重なった。





つづく




miu