つづきです






大野さんはゆっくりと顔を上げ、オレたちを見つめた。


「 この世に" 在る " ためには力が必要だ ってことは分かるか?霊の場合は残留思念だったり遺恨だったり…
ニノは前者だった訳だが。これは通常悪霊とはならない。そして、よっぽど強い念でない限りは、数年、もしくは数十年の間に弱まり自然と消える。いつかは尽きるんだ。
ニノがおばあさんとの約束だけを思ってこの場に留まっているのなら、それも…
いずれはそうなる筈だった」

おれ…説明とか苦手なんだよなぁ
と、背中を丸めた。

「普通はさ、会話なんか出来ないんだよ。過去の存在なんだから。
それが 話すわ泣くわ、冷蔵庫に隠れるわ…
現在進行形もいいとこじゃん。
そもそも怨霊の類でもない限り、霊が持っているエネルギーなんて微量なんだよ。
今まで "在る"だけだった時とは、力の消費量が格段に違うはず。…そうだろ?ニノ」


あ…れ?

そういえば、最初、ニノの身体は透けていなかった。普通に人だと思って話しかけたんだから。
立ち上がったニノの足だけが透けていて、驚いたのを思い出した。

思い返せば、日によって多少違うが…
ニノの身体は薄っすらと向こう側が見えるようになっていた。 

…今だって、ほら。



「オレ、消えかけてる…の?」

「本当なら、もう…」

「へ?」

「…お前、相葉さんの精気を取り込んで、今ここに居るんだ」


あぁ。
大野さんの言っていた意味が、ようやく理解できた。


「霊を身体に入れるってのは、力を与えることになる。…命を削るってことだよ」

「オレは構わないから!」

「…で、人の精気を吸うことを知った霊は、消える事を恐れ拒み、いずれ禍を引き起こす可能性が高い。成仏か滅するかしかないと言った理由がコレだ。
もう野放しに出来ない」

「ニノは オレと以外、そんなことしないって!!」

「相葉さん…ごめん。オレ本当に知らなかったんだ」

「そんなの、わかってるよ。だから…」


するりとオレの腕を抜けたニノが、大野さんの前に立つ。

やめて。
言わないで。


「でも、やっぱりオレが死んだこと、ばぁちゃんにナイショにしておきたいんだ。向こうには行けない。成仏できないってことは」

「ニノ、二人で考えよう? 絶対にいい方法があるはずだから!」



「消して、くれる?」



静かに
白い花が 微笑んだ。





つづく



miu