つづきです。









" ニノが消される?!"

そう…思うよりも先に身体が動いていた。
ニノを背中に隠し、彼へと向き直ると 睨みつけた。


成仏 か 
消す か

どちらかしかない 

そう言った 大野さんの声が、頭の中でリフレインしていた。


しかし、予想外の言葉が続けられた。


「理由を聞いて良いか?」


少しの間をおいて、か細い声が背中から聞こえた。


「……ばぁちゃんとの約束なんだ」
   
「ばあちゃんって…ニノのか?」

「うん」

「どんな約束?」

「それは…」


ポツリ、ポツリ と ニノの口から生い立ちが語られる。それは松本さんから聞いた話と ほぼ同じ内容だった。

両親を早く亡くして、この場所にあった家でおばあさんと暮らしていたこと。
その おばあさんもニノの成人前に亡くなり、更には自分自身も…

そして、ここから先は 初めて聞く内容だった。


「ばぁちゃん…言ったんだ。『お父さんとお母さんの分まで長生きするんだよ』って。『和は幸せにならなきゃダメだ』って…
ばぁちゃんの遺言なんだ。父さんや母さん、ばぁちゃんのところに行くには、早すぎるんだよ。
オレは、まだ…成仏できない」


あぁ。
抱きしめたくて…
我慢出来ず、振り向いた。

瞳を潤ませたニノが、オレの腕の中でふふっと笑う。


「もう…なんで相葉さんが泣いてんのよ」
「だって…」


涙を拭うように 唇が触れた…頬は
微かに温かいような気がした。


「イチャついてるところ、悪いんだけど。
成仏出来ないって言うのは…気持ちとしては理解できるけどさぁ」

「だったら!」

「…でもなぁ。成仏出来ないとしたら…このままだと、相葉さんが死ぬか、ニノが消えるか どっちかだぞ?
それで良いのか?」

「…死ぬ?!」
「ニノが消えるって?!」


同時に叫んでいた。

オレが死ぬ…とは言われたが、ニノが消えるなんて話は聞いてない。
大野さんの肩を掴んで揺さぶった。

「ねぇ、どう言うこと?」

「幽霊ってのは、死んだ時のまま…時間が止まってるもんなんだ。
でも、相葉さんと関わったことで、ニノの時間は動き出した」

「動き出したって…え?あ…」


自分の手に視線を落とす ニノ。

大野さんは
ガリガリと頭を掻いた。



つづく




miu