今日はこれだけ(笑)











薄暗い部屋

ピクリと動かした指先から、徐々に覚醒していく。

自分の置かれている状況が分からない…
そっと視線だけを横に移すと、開け放たれた障子の向こうの景色がひっくり返っていることに気づいた。それに柔らかい感触。

…布団に寝かされてる?
え? 何がどうなった?
オレ、配達の途中だったはず…

慌てて身体を起こし、部屋を見渡す。
アパートじゃない。
ここは…

四角い箱の隅で、ゆらりと影が揺れた。


「はぁ…会社に連絡しといたから。
車も残りの荷物もあんたの代わりの人が来て、持っていった」

「え…」

大野さんと話してる最中、目の前が真っ暗になって…
そうか。倒れたんだ、オレ。


「もう、面倒くさいから、親戚だって言っておいたよ。うちで休ませとくって」

「あの、ありがとうございます」

「分かった?…霊を身体に入れる危険性が」

「…オレが倒れたのは、寝不足とメシが食えなかったからだよ。ニノの所為じゃない」

「あーもう。
あんたより、ニノと話した方が良さそうだ」


スッと立ち上がり、手を差し出す。
眉間に寄ったシワは不機嫌そうだが、やっぱりどこか優しげで…
悪い人には思えなかった。


是か、非か。


オレは…
その手を握った。



本人の意に反して無理やり除霊しない事を約束させ、ニノの待つアパートへ帰る。

その道中、松本さんから聞いたことを話した。
オレの…想いも。


「ニノって照れ屋でさ、すぐ耳まで真っ赤になるの」
「よく喋るのに、全然うるさくなくないんだ」
「少し高い声が…心地よくてね。もっと聞きたいって思う」
「笑った顔がすごく可愛くて…」
「ずっと隣にいて欲しくて…」
「…なんか、ドキドキするんだ…/////////」


黙って…
時折、頷きながら聞いていた大野さんは 
頭を抱えて

やっぱ、面倒くさいのに関わっちゃったなぁ  と

小さく呟いていた。




つづく



miu