つづきです






オレが間違えて、隣の部屋に入ってしまったのか?
まさか と思いながらも慌てて玄関を開け、ドアの横に付いている小さなプレートを確認する。104号室。紙に書いてテープで止めただけの『相葉』の文字が風でひらひらと揺れていた。

……合ってる、よな。

ということは…アイツが間違ってるってこと。

ホッとして、ドアを閉めた。
部屋に戻ろうとして…自分の恥ずかしい格好に気づいたが、服は部屋の中に置いてある。
男相手とはいえ、丸出しのまま行くわけにもいかず、とりあえず 風呂場にあったタオルを巻き、股間を隠した。


「ちょっと、部屋間違えてるよね。
ここ…オレんちなんだけど」


ビクッと 大きく背中が揺れ、ゆっくりと振り返った。
驚いたように オレを見つめる飴色の瞳。

そうだろ?
びっくりしたよね?
オレだって、自分が部屋を間違えたのかと思って、めっちゃびっくりしたもん。笑


「だから、出て行ってくれるかな」


…驚いた顔が、イタズラな笑みに変わる。
そして、思いもよらなかった言葉を投げてきた。


「結構筋肉ついてるよね。何かスポーツやってるの?」

「いや、今はなにも。
あ、でも建設現場のバイトがすげーキツくて、体力使うんだよね」


って、そうじゃない。誤魔化そうとしてるのか?
コホン、と咳払いをした。


「…そんな格好でいるから、風邪ひいたんじゃないの?早く服着たら?」

「あ、はい…」


脱ぎ捨ててあった服を拾い、袖を通す。

…なんか、コイツのペースに巻き込まれているようで、面白くない。


「そうじゃなくて…出て行けって言ってるの!」

「出て行くも何も…
アナタよりオレの方が、ずっと…前から住んでるんですけど?」

「は?  …いや、だから、部屋間違えてるんだよね。ココはね、104号室。オレが借りた部屋なの」

「…合ってますよ?  オレ、ずっと…ここにいるんだから」


…前の住人?
まさか、そんなことないよなぁ。

でも、この破格の家賃…

急に その理由が気になった。


「ねぇ、家賃1万円って…
二人でシェアしてこの値段って訳じゃないよね?」

「………うーん、違うと思いますけど。笑
だって…」

「だって?」


スッと立ち上がったその姿

可愛らしい顔立ち
華奢な身体
そして…


足の…膝から下の部分が、透けていた。



つづく



miu