もう少し続いちゃう…










「カズ兄、お帰り」


キラキラの笑顔が眩しくて
オレは視線を落とした。


「…どうしたの?」

「え、別に…」


黒目がちな瞳が、ジッと覗き込む。

頬に手を添えると、指を滑らせて…
そっと抱きしめられた。



…オレの胸元に ポタリと落ちた
竹内の 綺麗な雫を思い出す。

オレへの気持ちが 過去になるまで…

少し離れて、見守らなくちゃ。




「……少しは、元気…チャージできた?」


見つめる、優しい瞳。

…落ち込んでたの、隠せなかったな。

ありがとう と、言おうとしたのに
口から出た言葉は違っていた。


「好き…」

「うん…でも、オレの方が好きだからね?」


くふふ、と 声が漏れる。

雅紀の胸に顔を埋めると
髪に…触れていた唇が 動いた。


「あ、ねぇ…音!」

「え?」


遠くで 弾けるような音がする。
そういえば、今日が 花火大会だったことを思い出した。


「ねぇ、カズ兄…付き合って?」

「どこに…」


オレの手を引いて、車に乗り込む。
もしかして、今から向かうんだろうか?
会場近くの駐車場は、もう一杯だと思うけど…

車は、花火大会の会場とは反対方向へと走り出した。


「どこに行くんだよ?」

「着いてからのお楽しみ〜♪」


雅紀は、下手くそなウインクを投げた。




坂道を上り、車を止める。

住宅が立ち並ぶ先に
木々の生い茂る静かな場所があった。

高台にある公園。

少し遠いが…
打ち上げられる花火が、キレイに見えていた。


「凄い…こんな場所 よく知ってたな」

「カズ兄、人混み苦手でしょ?
ココなら花火も見えるし、静かだし…
…って、先輩から教えてもらったんだけどね♪」

「先輩…?」

「…あれ?  何だ…先客がいる」


街灯の微かな灯りの下で
よく知った声が、響いた。


「櫻井!? 松本も…」

「センセイ、こんばんは!」


久々に、4人が顔を合わせた。




miu