末ズばかりで…お腹いっぱい?(´・ω・`)

まだ終わらない…
もう少しお付き合い下さいませ♪








side : J  



まだ少し 湿った パンツを気にしながら
並んでシートに座る。

ポツリ、ポツリと  ニノが紡ぐ言葉に
膝の上で 固く握った拳が  震えた。




18歳の誕生日

この日までに  王子と結ばれなかったら
消える…




お前 こんな…重いものを
その胸に抱えてたのか?

眠れない夜を   
一つずつ  カウントダウンして
今日   この日まで…


今更ながら、気付いてやれなかった事が 
悔やまれてならない。


「ゴメンな…」

「?  何で 潤が謝るんだよ。
オレは 元々 300年前に消えてるんだし。
消えるのは悲しいけど…元に戻るだけだよ」

「そんな事言うなよ!
…絶対、消えさせないから。

あのさ、お前の知ってること…全部教えて?
何か 手がかりがあるかも」



俺たちは 互いの記憶を 手繰り寄せた。


気が遠くなるほど 昔の記憶…



海で 彼女を見つけた日から
俺の… あの男の  元を去るまで

その部分の記憶は  ニノの話と
ほぼ同じだった。


…知らなかったのは 

彼女の  ”元の姿”  と  声を無くした理由。
そして、最期の…時。

それが こんなにも
悲しい結末だったなんて…



「…ね、悲しまないで?
消えたのだって…全て  彼女の意志だったんだよ」

「…だけど…」

「オレね、彼女に感謝してるんだ。
あの時 消える事を選択したから…今 こうして 潤の隣に居られるんだよね」

「…何だよ、それ…」


…熱いものが 込み上げてきて
俺は下を向いた。



もう、離れたくない。

どうしたら良いんだろう…


ふ、と   ニノの言葉を思い出す。


「王子の瞳に人魚が…って   過去の記憶の事? そこは クリアしてるのかな」

「う…ん、どうかな?
潤には、出会った時の記憶も  その後の 王子の記憶も あるってことよね?」

「…おおよそ、な?」

「人魚の記憶と…二人が 結ばれること」

「…結ばれる、か」

「あの、結ばれる…って意味も よく分からないんだ。男同士だし、結婚…は  どうしたって 出来ないじゃない?
躰を繋げる事なんて 意味無いかもしれない。

本当は…
こんなの…ただ  潤に抱いて欲しい口実なんだよ」


耳まで真っ赤にして 俯く。


「いや、こんな事 お前に言わせて…ゴメン」

「フフッ…
オレはさ? 人魚でも天使でもない。普通の男子高校生だからね?
好きな相手と  ヤりたいと思うし、愛されたいとも思う。
それこそ、こんな事言って 潤が 引いたらどうしよう…って、ビビってた。笑」

「ニノ… 」

重ねた手を ギュッと握った。


心は 既に 結ばれていると思ってる。


それでも… ”愛し合う” という行為は
やっぱり 特別な気がするんだ。

過去の二人が 成し得なかった  愛の交歓…




顔をあげると
いつもの 見慣れた景色。


電車は ブレーキ音を鳴らしながら
ゆっくりとホームに入って行った。








ネットで調べた
頭の中だけの 頼りない知識を思い出し

駅前のドラッグストアで 
ゴ  ム  と… 潤 滑 剤と
お菓子の袋を 適当に カゴに入れた。

セルフレジを選び、清算する。


…やっぱり ちょっとだけ
ドキドキした。


「何買ったの?」

入り口で待っていた ニノが覗き込む。


「う…いや、色々…」

俺は 後ろ手に袋を隠した。


「…あ ///   そうか」

何となく察したように
ニノが 頬を染めて…微笑んだ。


まだ明るい 駅前の商店街

さすがに手を繋ぐのは 諦め
二人並んで 歩く。


柔らかい陽射しを受けて
重なるように寄り添っていた  二つの影が

突然…一つになった。


驚いて 振り返ると

ニノが足を止めて  目を閉じていた。



「…どうした?」

「………人が 生きている音がする」



耳を澄ますと…

車の音や、オバちゃんの笑い声
そして、雑多な騒めき。

ここには  人々の生活音 が響いていた。


「うん…そうだな。
この中に、お前の声も入ってるよ」


そう言うと 驚いたように顔を上げて
オレを見つめた。


「そうだね…フフッ」


ニノは 俺の手にあった 袋を 
ヒョイっと取り上げ、走り出した。

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「…潤!!  早く帰ろう!」

「チョッ…待てよ!」


ガサガサと音を立てる袋を、嬉しそうに振り回して走る ニノの後ろ姿を…

俺は 慌てて  追いかけて行った。





つづく