大宮さんの お話です。
軽くBL含みますので、苦手な方はご遠慮下さい。








愛おしいひと。

頬に 自分のではない…
温かい 水滴が  伝って 流れ落ちた。


二人とも 泣きながら  
クシャクシャの顔をして

触れては 離れ
離れては…再び求め合う

その   甘く 優しい 口付けが


智と 溶け合い  一つになったような  
そんな…幸せな 錯覚に陥らせ

この時間が  
永遠に続いたら良いのに、と
そう 願わずに いられなかった。



ふ、と  離された唇を 

少し…寂しく思いながら  見上げると
智は  ふぅ、と  一つ 息を吐いた。


「にの…これからは ずっと  一緒だよ?」


翔さんは   ”余計な事を考えずに”  
と言ったけれど…

でも  このまま  何も無かったフリして
この人の隣には 居られない。


離れていた間の…
様々な想いが 交錯して
現実へと 引き戻された。


智の 背中に回していた手を外し
胸の前で   ギュッと握りしめる。


それを見た 智は    

固まった指を

一本  一本…
優しく  解いていった。


「メール…さ
にの じゃない事は…すぐに分かったよ…」

「え…   なん…で…?」


んふふ、と笑う。


「何でって…何でかなぁ。

”にのじゃないね、誰?”
って送信したら…翔ちゃんが ”ゴメン” って 返信してきて。

おいらに愛想を尽かしたんなら…『もう待てない』って一言  送信すれば良い。
でも、そうじゃなかった。
だから…何か 理由があるんだと そう思ったんだ。

なら、自分のやるべき事を 終わらせて…それで  堂々と にののところへ帰ろうって」




5本目の指が  解かれる頃には

智に 全てを話そうと…
そう  心が決まっていた。

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「……あの、智。
言わなきゃいけない事があるんだ」

「ん?」


智は真っ直ぐに…
ワタシを見つめる。


「………」


話そうと そう 心に決めたのに
言葉が…出ない。


智の 手が  そっと…ワタシの手を包み込むと

その温かさに促されたように  
言葉が 溢れ落ちた。



「……他の人に  抱かれたんだ…」


ピクリ、と
重ねられた手に 力が入った。


「…そっか。
にのは…大丈夫?」


…?
大丈夫って…どういう意味?
もしかして…


「…翔さんに 何か聞いたの?」

「へ?  …何も聞いてないよ。
だけど…だけどさ、もし  にのの気持ちが おいらから離れたとしたら…その時は 分かる気がするんだ。

今、おいら達は ちゃんと、繋がってる。
それなのに…その…他のヤツと、って事は」

長い睫毛が  俯いた頬に影を落とす。

「にの、辛い思いをしたんじゃないかって。
…そう思ったんだ」


何だよ  それ…。


「…側にいてやれなくて ゴメンな」

「………」


何も言えず
智の胸に 顔を埋めると

背中に回された腕に 力がはいり

息もできないほど…
強く引き寄せられた。



耳元で 小さく聞こえた 


 ”  愛してる  ”  の 言葉と ともに



However far away 
I will always love you 
However long I stay 
I will always love you 
Whatever words I say 
I will always love you 
I will always love you …



…海で聞いた
懐かしい  あの曲が

どこか遠くで  鳴った気がした。
 


つづく



miu