妄想小説です。
BL要素含みますのでご注意下さい。
キャンバスを覆っていた
布地に手をかけ…落とした。
「 あ… 」
絵が、違う。
そこにあったのは
前に 智が描いた ワタシの絵じゃなくて。
淡い色彩の中に
落ちる 薄茶色の 影。
全体的には すごく柔らかい印象なのに
下から上へと伸びる 1本の線が
どこか…
凛とした 雰囲気を醸し出していた。
…動けなかった。
これは。
この絵は…
「あれ? おいら…鍵閉めなかったか?」
ガチャ、と開くドア。
ゆっくり 顔を上げると
アナタが…いた。
「にの……」
「 さと、し…」
突然の再会に
ふたりとも 固まったまま
動けないでいた。
~♪~♪
スマホの着信音が 部屋に響くと
その音が
ワタシを 現実に引き戻す。
画面には ”翔さん” の文字。
「…ハイ」
『ニノ? 今どこにいる!?』
「あの… アパートに、戻ってきてる」
『……そうか。って事は…一緒だな?』
「うん…目の前に 居るよ」
『本当にお前たちって…凄いタイミングだな。
そこに 戻ろうと思えた…その気持ちに素直になれよ? 余計な事は 考える必要ないから」
視線を智に戻すと
智の瞳は 優しく…微笑み
小さく 手を広げていた。
「にの…ただいま」
「おかえり」
ワタシの手から
スマホが 滑り落ち…
ゴトッという音が響く前に
智の胸へと 飛び込んでいた。
智の匂い。
まだ 新しい…絵の具の匂い。
胸いっぱいに吸い込むと
涙が 溢れて止まらない。
智の ワタシを抱きしめる腕が 解かれると
顎を掬われ
泣いて…
クシャクシャの顔に
優しいキスが 降りてきた。
つづく
miu