木崎ゆりあに焦らされた今朝、
そのせいでそわそわした気持ちを抑えられないまま午前の授業が過ぎて、
大原陽一はやっと昼休みを迎えたのだった。

大原はB組。ゆりあはG組である。
2階の端から端へ行かねばならないが、今の大原にはそんな長い廊下の距離など無いも同然だった。
さっさと飯をかっ喰らい、早足でG組を訪ねる。

ゆりあはいつも教室の後ろの窓側、4人グループでお昼を取っている。
だが、大原がG組を覗くと、いつもの指定席には誰も居ない。
食べかけの弁当が4つあるだけだった。

G組のサッカー部のやつに訊く。

「なあ、ゆりあどっかいった?」
「なんか先輩から屋上に呼び出されたとかで、出てったよ」
「誰にだよ」
「しらねーけど。ゆりあだけ呼び出されたのに4人で行ったぞ」


大原は屋上の見える、4階の渡り廊下へ行く。
真っ先に見えたのはゆりあの後姿、その奥にサッカー部キャプテン、3年の浜嶋さん。
後輩の女からの人気も高い先輩だ。

二人の距離は少し離れている。
音が聞こえなくても、雰囲気で分かった。こいつは告白だ。

ゆりあがなにかを言って、浜嶋さんはぐっと唇を引き締めた後、微笑んで、
なにか言うと、屋上から出て行った。


大原はしばらくの間どきどきしていた。
他人の告白を初めて見てしまったのもある。その相手がゆりあだったのもある。
もともと気持ちが高ぶっていたのもあるだろうか。

なんだかこの後ゆりあに会う気にはなれず、
浮ついたなんともいえない気持ちのまま、自分のB組の教室に戻った。

午後からの5時限目は、好きで得意な物理だったが、あんまり頭に入ってこなかった。