真妄想戦国絵巻 プロローグ | 開発くんのブログ

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ピン芸人開発くん劇場が日払いで一人暮らしの日常も芸人活動を書き綴って行きます。

舞台は阿佐ヶ谷中心

二条城の庭で幼き日の儂菊童丸は父足利義輝公に剣の稽古をつけてもらっていた

菊童丸「せああ」

義輝「よいぞ菊童丸。その調子じゃ」

菊童丸「はい!」

私は無我夢中で打ち込んだ

しかし途中で木刀を弾き飛ばされた

菊童丸「参りました。父上には敵いませぬ」

卜伝「落ち込む事はございませぬぞ」

菊童丸「卜伝様」

卜伝「若はまだお歳は四つになったばかり剣を始めて一週間も経っておりません。ここまで打ち込めていれば初陣を飾るのもそう遠くはありますまい」

菊童丸「まだまだです。私の様な未熟者が戦場に出ては家臣達の足を引っ張ってしまうだけです。大将がそれでは家臣達の統制が取れなくなってしまいます。まだまだ精進しなければなりません」

義輝「殊勝な心掛けだ菊童丸だが焦ってはいかん。強いては事を仕損じるぞ」

菊童丸「確かに肝に命じさせて頂きます」

義輝「今の上達の早さならばすぐに父にも追いつく…いや越える事も容易かろう」

菊童丸「父上も卜伝様も少し誉めすぎです。もっと厳しくして頂かなければ困ります」

義輝「全く手痛い事を」

卜伝「成長が楽しみですな」

その後卜伝様に兵法や政の意味を学び、とても幸せな時間だった、しかしそれは意図も容易く崩れた

永禄8年(1565年)5月19日、久秀と三好三人衆は主君・三好義継(長慶の養嗣子)と共に義栄を奉じて謀叛を起こし、二条御所を軍勢を率いて襲撃された後にこれを永禄の変と呼ばれた。

菊童丸「父上!これは一体」

義輝「おお菊童丸無事であったか。謀叛だ」

菊童丸「謀叛?どこの不忠者がその様な」

義輝「三好義継と松永久秀じゃ」

菊童丸「三好様と松永様が。なぜその様な事が」

義輝「それは儂が弱いからじゃ」

菊童丸「そんな事はありません。父上の剣の腕は天下随一」

義輝「聞け菊童丸。武芸の強さではなく将軍としての強さだ。儂の弱さのせいで幕府は衰退し国や民が飢えていくのだ」

菊童丸「でも父上は」

義輝「父を慕ってくれて有難う菊童丸」

菊童丸「父上はどうされるおつもりですか?」

義輝「折角この様な大舞台を用意してくれたのだ。なればそれに応えてやらねば奴等に悪かろう」

そういうと父上は武器蔵から大漁の刀を持ってきた

義輝「さてどれで切るか」

父上は何やら楽しそうだった

菊童丸「父上この菊童丸もお供致しまする。逆賊共を見事打ち払ってご覧にいれましょう」

義輝「頼もしいではないか。この状況下で物怖じしないとは。ならば刀を選ぶが良い。勝てたら褒美としてくれてやるわ」

菊童丸「本当ですか。でしたら」

刀を選んでいると

義輝「立派な武士になりおった。父は嬉しいぞ。そなたと戦場で肩を並べたかった」

菊童丸「これに」

義輝「許せ菊童丸!」

振り向くと

菊童丸「父…上」

腹に衝撃を受け意識が途絶えた

義輝「卜伝」

卜伝「はっ」

義輝「菊童丸を宜しく頼む」

卜伝「心得ましてございます」

義輝「すまぬな」

卜伝「大馬鹿者」

儂の師匠は最期の悪態をついて菊童丸を連れていった

義輝「さて。宴には酒が必要じゃな」

城の者にありったけの持ってこさせ城から逃がした

義輝「酒宴じゃ」

杯に酒を注ぎ呑み込む

義輝「うまい」

三好兵「義輝公」

義輝「おおぞろぞろと来おったわ」

三好兵「この様な時に酒等ご乱心なされたか」

義輝「そう急ぐでない。宴は始まったばかりじゃ。もそっとゆるりと致せ」

儂ら再び酒を杯に注いで呑み込む

三好兵「我らを愚弄するか」

一人の兵が儂に斬りかかってきた

義輝「遅い」

兵の手を掴んだ

義輝「そして軽い斬撃じゃな」

手を掴みながら立ち上がった

義輝「ふん」

三好兵「ぐあっ」

義輝「今の斬撃ならば儂のまだ四つの嫡男菊童丸の方が余程重く早い斬撃を出せるぞ」

酒を再び煽る

三好兵「このお」

今度は兵の喉元を掴んだ

義輝「お主の目には恐怖がある。菊童丸はこんな状況下でも恐れておらぬかったぞ」

ここまでで二人切り捨てた

義輝「どおしたどおした。儂を斬らんのか。揃いも揃って三好の兵は腰抜けばかりじゃなそのようなへっぴり腰では儂の首は愚か菊童丸の首さえもとれぬぞ」

三好兵「くそおお」

義輝「よいぞ掛かって参れ儂を楽しませよ」

しばらくして14人は切ったであろうか

義輝「まだまだ足りぬぞ」

酒を煽る

周りを見ると畳に無数の名刀が所狭しと刺さっている光景が広がっていた

義輝「どれもこれも駄刀じゃったのう。血油がついてすぐに切れなくなってしまうではないか」

三好兵「かかれ」

今度は四方から同時に掛かってきた

義輝「ははあ」

刀が折れた

義輝(まったく)

敵兵の刀は儂の体を貫いていた

義輝「やれば出来るではないか。ガハッ」

義輝(五月雨は露か涙か不如帰我が名をあげよ雲の上まで。菊童丸よ。其方の働き天より楽しみに眺めておるぞ。生きよ菊童丸)

菊童丸「父上!!」

卜伝「気が付かれましたか菊童丸様」

菊童丸「卜伝様。父上は父上は何処へ」

卜伝様は何も応えてくれなかった

菊童丸「成程父上らしい」

卜伝「義輝様より文を預かっております」

卜伝様はワシに文を渡してきた

開くと

義輝(手紙)「菊童丸よ。元気にしておるか?其方がこの文を読んでおると言う事はワシは恐らくこの世にはもうおらぬ。義継と久秀が近々謀叛を起こす事はわかっておった。これも儂の弱さが招いたもの。こんな弱き父を許してくれ。そしてこれは儂から其方にする最期の頼みじゃ。生きよ。生きて生きて生きて生き抜くのじゃ。そして乱世果てを見よ。その道中で散っていく者達の声を聞き想いを聞きそしてそれを紡いでいくのだ。其方にはそれを成せる不思議な力をもっている。恐らく其方が選ぶであろう刀は「紡がれ」じゃ。「紡がれ」で乱世を生き抜けそれが儂が其方に出来る最初で最期の頼みじゃ」

菊童丸「なんとも父上らしい遺書ですね。卜伝様貴方の故郷へ私を連れて行って下さい?」

卜伝「菊童丸様!?」

菊童丸「私はまだまだ未熟者故今の強さではとても乱世を生き抜く事はままなりません。ですから卜伝様の下でもっと強くなりたい。お願い致し申す」

卜伝「わかりました。この卜伝、菊童丸様を鍛え上げてご覧にいれましょう」

菊童丸「はい」

こうして儂はこの果てなき乱世に身を投じる事となった

プロローグ 完