男前


山本集さんの書かれた著書「男前」です。

帯には、2005年3月映画公開となっていますが、完成したんですかねぇ。

私は知りませんでした。


山本集氏は何度もメディアが取り上げているので有名ですね。


・波商野球部で甲子園を目指す。(元巨人張本氏と同期)

・監督の暴力問題で、出場停止となる ⇒ ぐれる。

・社会人野球地区大会決勝で審判を殴り、全国大会出場辞退。

・すし屋を開店。繁盛する。

・智弁学園初代野球部監督となる。

・監督の暴力問題で、学校を去ることに。

・やくざの世界に身を落とす。

・周囲の人に支えられて、画家として成功し、現在に至る。


なんとも激しい人生をおくってこられた方です。


一貫しているのは、野球に対する狂気とも言える情熱です。

その情熱が桁外れな分、一般社会に認められずに排除されてしまう。



本文に書かれている内容は壮絶の一語につきます。

今夏、問題になった暴力なんて比較になりません。


でも、人生全てをなげうって、子供達の夢をかなえてあげたいという

情熱は、選手達に伝わっていて、殴られても、精神的に追い詰め

られても、皆監督を信じてついていったのでしょう。


練習内容といったら、想像を絶する猛練習です。

素人同然の選手達を、約1年で強豪校と互角に戦えるまでにした

のですから、半端じゃない追い込み方です。



山本監督が、智弁を去ることになる原因も、今夏と全く同様。

退部した選手の親が、メディアに対して密告をしたのです。


朝日新聞41年6月10日

「根性養成と生徒を殴る・奈良智弁高校野球部監督」

読売新聞41年6月10日

「しごき認める 智弁高の山本野球部監督」





当時の選手談(岡本重喜さん)

「しごきで出場停止と言われたこと、何でやと?何もしごかれてないや

ないか。練習が厳しいのであって、何で世間に通用しないのか?分かり

ませんでした。それが不思議でした」


当時の選手談(垣内孝男さん)

「監督が僕達を嫌ってやっているのではないからやと思うんです。

一生懸命、こいつらを一人前にしてやらなあかんという思いがあった

からや。我々のそういうふうに思っていたんですが」



本文

またしても、野球の神様に嫌われてしまったのだ。私の甲子園の夢は

はかなく消えた。私は、智弁学園高等学校に辞表を提出した。

どこでどうしていたのかは覚えていない。すきでもない酒をあおって

すっかり酔っていた。

誰かと喧嘩してどついたかもしれない。

気がついた時にはグランドのマウンドの上に座っていた。あたりは

真っ暗で人影も無かった。梅雨の、生暖かい雨が降りしきっていた。

私はそこで、誰はばかることなく、声を上げて泣いた。もう人生すべて

終わったように思った。

この日以来、私が智弁学園高等学校のグランドに立つことは無かった。



智弁学園は出場停止になった翌々年、山本監督と少しの時間を

すごした2期生が甲子園出場を果たしている。


その後の智弁学園の活躍は、高校野球ファンなら誰でも知っている

と思います。


ものごと全て、情熱が無ければただの行為に過ぎない。

人間は、安いパフォーマンスや見せ掛けの言葉などでは決して動かない。

情熱が伝わり、その感動によって、突き動かされるのでしょう。


しかし、その情熱もあまりに度が過ぎていると、社会一般に認められ

なくなってしまう。


私は暴力はいけないと思うし、山本監督のやり方が正しいとは思って

いません。

ただ、どの様な世界でも、こういう桁はずれな人間が全て排除されて

しまう様な世の中は、つまらないと思っています。


これからも、桁外れな、魅力ある人たちと逢って話がしてみたいと

心から思っています。