Aliceのブログ
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プロローグ


ここは不思議な夢の世界。


あたしはいつも、この扉が怖い。


『論理的じゃないし、ありえないことばかり起こるから』


『絶対に、こんな可笑しな世界なんて信用しない』


そう誓った。


なのに何時からだろう。


この世界の、馬鹿げた法則を守り、少しずつ、扉を利用していくようになったのは。


それが、やがては取り返しのつかない、大事になるなんて。


あたしはそんなこと、とうてい考えていなかった。




第①章 穴に落ちた少女


「あーもぉ!!!!遅刻する~っ」


「お、お姉ちゃん!!頑張って。あと100mちょいだから」


「うっさい!!!あんたが寝坊すっからいけないんじゃんっ。黙って走れ!」


道行く人々をビビらせて、ランドセルを背負った二人の子供が、我先にと目の前に建つ小学校を目指して走っていた。

一人は女の子、もう一人は男の子だ。


「ほらー、双子ぉ。早く来ーい。門閉めてまうぞー」


小学校の校門の前には、紺色のジャンパーを着た老人が、大声を上げながら二人の子供に手を振り叫んでいる。

それを聞きつけたのか、子供二人の走るスピードがアップした。

登校完了を知らせるチャイムが、鳴ったと同時に、二人は校内に滑り込んだ。


「まぁギリギリかの。ほら、はよ行かんと、授業が始まっちまうぞ」


老人が重い門を閉めながら、意地悪く言った。

それを聞いた女の子は、ギロっと老人を睨む。

明らかに殺気立っていた。


「行きますよ。あんたみたいなザコ管理人に言われる筋合いないし」


「フン。ならさっさと行けぃ。明日からは、もっと早く門を閉めてやる」


まだまだ小さい少女と、老人の二人が、正面きって睨み合う光景は、なかなか迫力があった。

どちらも恐ろしい形相を出しているが、どちらも引かなかった。

もし、そばにいた、もう一人の子供が割って入らなければ、二人の睨み合いは、永遠に続いたままだったろう。


「お姉ちゃん…時間…」


その一言で、再び二人の子供は、自らの教室に向かい、猛ダッシュをしていた。





「おはよう、実緒。今日はめずらしくギリギリだったね。寝坊?」


「あたしじゃないよ。あっち。海里」


そう言いながら、あたし、高野実緒は、弟、高野海里を指差し、イライラしながらランドセルを机に叩きつけた。


「海里くんが寝坊なんだ。めずらしいね」


「『海里くんが』って、あたしも寝坊したことなんてないけど」


あたしは、友達の遥を見ながら不機嫌そうに言う。

遥はあたしを一瞥すると、サラリと


「そうだっけ」


と言った。


「何それ。なんかあたしが悪者っぽくない?」


「そお?」


素っ気ない返事…。

あたしは舌打ちすると、教科書を机にしまい込んだ。


いつもそうだ。

何かとあたしは損をしてる。

ちらっと廊下側の前の席にいる海里を見て、あたしはますます落ち込んだ。


あたしと海里は、二卵性の双子。

身長も近ければ、クセや動作まで似てると言われる。

でも、そんなことはどうでもよかった。

むしろ、似たくなかった。もっと別の面で似てほしかったのに。



海里は、運動も出来れば、勉強も出来る。

あたしだって、運動は出来る方だ。しかし勉強はそこそこ。

それが、大きな欠点だ。

他にもこまかく言えば、海里はかなりモテる。

つまりパーフェクトってわけ。


親友の遥だって、なにかと海里の味方をする。

海里なんて、どーでもよくない?


たかが運動出来て、勉強出来て、ちょっとかっこいいっぽいだけじゃん。


あたしのタイプとまるっきり違うし。


「まぁまぁ実緒。そうスネないでよ。うち、実緒んことも大好きだよー」


「いいよ遥。フォローになってないしさ」


あたしは軽く親友を追い払った。

ちょっと一人にさせて。


遥はそんな実緒の気持ちに感づいたのか、どこかへ行ってしまった。

ちょっぴりあたしは、遥に感謝する。

遥は昔から、こういうあたしの態度に付き合ってくれるのだ。


「悪かったな…」


あたしはポツリと呟いた。