この考え方を海外で戦略的に活用する企業がある。世界89カ国・地域に進出する資生堂だ。デパートの化粧品売り場などで働く同社の美容部員は海外だけで約1万1千人。国も文化も異なる彼女らに、おもてなしの行動規範を示した冊子を2009年から配布してきた。すでに26カ国語に翻訳されている。
資生堂が考える「おもてなし」は、顧客との一期一会を大切にした裏表のない接客態度で、茶道に通じる精神だ。冊子には、あるべき立ち居振る舞いや接客方法を記載。英訳すると微妙なニュアンスが伝わらないと考え、「OMOTENASHI」を世界共通語にした。
もっとも、海外では当時、営業時間中に顧客カウンターで弁当を食べる美容部員までいたほどだった。日本人のやり方をまねしろというだけでは表面的な理解しか得られない。そこで導入したのが科学的分析だった。例えば肌への触れ方で顧客の心理や脳波がどう変わるか、洋服や髪が乱れると顧客の視線はどこに向かうか-などの実験データを裏付け材料として示し、浸透を図ることにした。
成果も出ている。他社と比べた顧客アンケートで満足度を示す項目が上昇、顧客1人当たりの購入額も増えた。論理性を持たせる工夫により、おもてなし精神は海外でも大きな武器になった。これは、日本らしさを生かした海外展開を考える上でのヒントでもある。
日本経済を語るとき、出てくる言葉は厳しいものばかりだ。円高やデフレは解消されず、価格競争の消耗戦で韓国勢に押されっぱなし。世界2位の経済大国という地位は中国に奪われた。だが、防戦一方でいいわけはない。日本には技術やノウハウなど海外で戦える武器もたくさんある。
世界の期待も高い。11年の民政移管後、新たな投資先として注目されるミャンマーでは、大和総研や東京証券取引所など日本の官民が証券取引所や金融インフラ整備、法整備を支援している。韓国なども触手を伸ばしたが、ミャンマー側が突っぱねたといわれる。
背景にあるのは日本への信頼感だ。街は中古の日本車であふれ、約50年前に日本からの戦時賠償で建設した水力発電所はいまなお重要な電力供給源だ。適切にメンテナンスすれば、いつまでも使い続けられるという実績が日本の高いブランド力につながっている。
今の日本企業には、意思決定の遅さなど、世界を舞台に戦う上で改善すべき問題点も多い。その一方で今ある日本の力を最大限に生かし、発展させる道筋を追求することも大切だ。これまで培った経験を生かせば、最先端でなくても世界に貢献できる分野はたくさんある。世界経済が混迷の度合いを増している今こそ、日本の真の実力を見極め、再び覚醒(かくせい)させるべきときなのである。(経済本部部長・長谷川秀行)
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