私は不器用だ。
クラスで1人、縦笛が出来ない。クラスで1人、剣道道具が片付けられない。縦列駐車が出来ないなど。


以前いた病院でも、何にでも時間がかかる『出来ない人』だった。


そんな私でも、一目置かれていることがあった。


待合室で怒鳴ってしまった患者さんへの対応だ。そんな時は決まって私が駆り出される。そして別室でおはなしを聴く。


これは基本的にはソーシャルワーカーさんの仕事。


ただ、患者さんが激怒している時は私にお鉢が回ってくる。


とにかくお話を聴く。ひたすらお話を聴く。


後輩からは「怒っている方のお話、よく怖がらずに聞けますね」と言われた。


うん。別に怖くないんだよね。同じ人だから。


患者さんにはそれぞれ様々な社会的背景がある。『何故にそんなにも怒ってしまうのか』に興味があって、『怖い』という感覚にはならない。


先生の前ではいい人で、僕らにはコロッと態度が悪くなるような類いの人の方がよっぽど苦手だし、怖かった。


実際、怒鳴ってしまった人としゃべってみるとやっぱり心底根性の悪い人はほぼいなかった。たまにいたけど(笑)。


ちょっとばかり不器用なだけなんだと思う。私と同じように。


仲良くなってみたら、私に子供が産まれると嬉しそうに大きなスイカを持ってきて、「子どもは宝だからな。おめでとう」と言ってくれる人までいた。


こういう人をしっかり受け止める。それが不器用な私に出来ること。そんな気持ちを大事にしたい。