ここは、山の中の山。つまり、田舎。
人口およそ100人。もう全員の名前は覚えてしまった。
そこで住む西崎 菜乃花は高校2年生。といっても、高校はないので毎日、往復3時間をかけて近くの高校へ通っている。
「あぁー。やっとついたよ…ただいまぁー!」
「お帰りなさい。」
ここで住む高校生は菜乃花のたった1人。周りは高齢者ばっかり。
もちろん、菜乃花の家族も60歳以上の人だけだった。
「なのか、ご飯食べる?」
「うん!お腹すいた!でも、明日は山で探索してくるからいらないや。」
「ほんと、好きねぇ。」
だって、家にいても面白くないもん。とは言えず、あはははと苦笑いするだけだった。
次の日。
「なのか、お弁当ちゃんと持った?」
「もー。過保護すぎ!大丈夫だよ。」
心配するおばあちゃん。なんだか顔色がよくない。よっぽど心配なのか。
「そぉ?あっ。おばあちゃん、今日はおじいちゃんとなのかのお母さん、お父さんのお墓参りついでに病院行ってくるわね。少し遅く帰ってくるかも…」
「えっ!?おばあちゃん、大丈夫?」
お母さん、お父さんまで死んで、おばあちゃんにも死なれたら困る。そわそわしている菜乃花をみて、「大丈夫よ。」と落ち着いて言う。
「腰が痛いだけだから。別に、健康には害してないわ。それに、おばあちゃんは100歳なっても死なないわ。」
自信満々に言うおばあちゃんを見て、菜乃花も落ち着きを取り戻した。
「じゃあ、行ってくるね。おばあちゃんも気をつけて。」
「えぇ。行ってらっしゃい。」
バイバイと手を振り、走って山へと向かって行く。
「ランランラン~♪」
なぜか上機嫌な菜乃花。いつもは同じルートを通るけど、今日は違うルートなので景色にも新鮮さがあって楽しい。
すると、なにか細い道を見つけた。
「…?なんだろう。んー。行ってみようかなっ!」
全く危機感を持たない菜乃花。細いけどちゃんとした道。真っ直ぐで分かれ道もない。
「こんな道、あったんだ…」
ちょくちょくと進むが霧が濃くなってきた。少し不安になりはじめた菜乃花は引き返そうとしたその時。遠くに橋が見えた。
近づいてみると橋はボロボロで今にも崩れそうだった。
「ありゃりゃ。これはダメだな…だけど…」
橋の向こうには行ってみたい。だが、交通手段はこの橋しかなさそうだ。
菜乃花はゴクッと喉を鳴らして決めた。
「よし、行こう。たいした距離でもないしね。」
そっと一歩。激しく揺れる橋。怖い。だけど、楽しい!久しぶりだ、こんなに冒険心が溢れ出すのは。
どうにか橋を渡った菜乃花。だが、そこでみた光景は…
「なに、ここ…?まるで、ヨーロッパみたい。」
だけど、何か違う。和と洋と組み合わせたような…
すると、遠くから声がしてきた。
「おぃっ。誰だ!こんな時間に外へ出てる女は!」
なにか怒ってる?てか、誰!?知らない人だ。そして、腕を掴まれて…
「逮捕だっ。」
そう言われ、どこかに連れていかれた。
えっと…なにが起こったのかな?ここって牢屋?てか、まずどこ?こんなのみたことない。それに、日本語だし。
混乱する菜乃花。すると、向こう側の牢屋から男の人の声が聞こえた。
「ちょっと、そこのお嬢さん。ここからでたくない?」
「えっ…でたいよ!当たり前でしょ!」
半分怒り気味の菜乃花は八つ当たりをしてしまった。だが、表情をかえない男の人。ん…こいつはかなりの…
「イ…イケメンだぁ。」
「えっ。そう?照れちゃうなぁ。」
田舎で男の人なんて全然いないし、ましてやイケメンなんか…いるわけがない。
初めてみるイケメンに感動した。
「…って。そうじゃなくて。君、ここから出たいんでしょ?あとでなんでも言うことを聞いてくれるっていうなら出してあげてもいいよ。」
なんか偉そうな人。だが、イケメンだから許される。それに、ここから出られるなら…
「するっ!なんでもするよ!」
「よっし。その言葉、覚えておいてよ。」
男の人はそう言うと、立って細長いものを裾からだした。
カチャカチャ。ガチャッ。鍵が開いた。
「えっ…めっちゃ単純じゃん。」
騙された感があってモヤモヤしたけど、もうなんでもいい。やっと帰れる!
「ありがとう!えっと…さっきの約束だけど、なにをすればいいのかな!?」
男の人はニヤッと笑い、そしてこちらを向いた。
「僕の名前は近藤 利吉だ。君の名前は…?」
「私?私は、西崎 菜乃花だよ。」
早く帰っておばあちゃんに会いたい。そんな思いをするのは久しぶりだ。だから、はやくっ…!
「そうか…菜乃花、僕と…」
僕と…?
『結婚してくれっ…!』