雨
いつか
空のプールがひっくり返ったような雨に僕は出会った
すばやく財布を盗って逃げ出すようなポーズで走り出す人
僕はその中を悠然と歩いてみた
ときおり苦い顔をしながら空を見上げた
都会が無くしてしまった土の跳ねた匂いと自分が今日くぐりそこねた問題のために
少しだけ体温が落ちた頬に
今はもう別れてしまった彼女の電話の切り際の虚ろな返事にも似た
生温かい雨は
滝のように切れ目無く僕を叩いた
僕のTシャツは川の近くで捨てられたビニールの情けなさで
子供の頃に覚えた言い訳のように張り付いた
僕は何故だか
いろんなことを知っている気持ちになり
大きな意味が僕の内側を自転した
家まであと15分ほどの距離
傘のないときの最後の手段を使った僕だったが
あのときの雨は
たとえようのない解放感を僕に浴びせた
