部屋で、一日中机に紙とペンを持ち、向き合っている。
休憩と決めた時間には、過去の時代に思いふける。



~少年時代のボク~


こっちへ来て、今はもうなかなか会う機会も減ったけれど、
ボクには、たっちゃんと言う幼馴染の友達がいる。
家も近くて、同い年、物心ついた頃からずっと一緒だった。
通っていた保育園は、違っていたけれど、
保育園が終わると寄り道せず、
お互い真っ直ぐに帰ってきて2人で遊んだ。



当時は、ナヨっとした体つきだったボクに比べ、
たっちゃんは、はちきれんばかりのムチムチ野郎でいかにも、男の子という体つきで(それが高じ、今では立命館大の柔道部主将となっちゃったのだ。)
今、思うと、ボクはそんなたっちゃんを乙女のような目で見ていた様な気がする。

好きで、好きでたまらなかったから、毎日2人で一緒にいた。
そしてボク達は、別々の保育園を卒園して、
田島小学校という同じ小学校に行くこととなった。



小学校で一緒になれて、奇跡的にたっちゃんと同じクラスにもなれた。
その時ばかりはボクは神様を信じたし、たっちゃんもそうだったと思う。
あたり前のように、朝はランドセルを背負ったたっちゃんが家に来て、2人で一緒に歩いて学校に通い、同じ教室で勉強して、休み時間も一緒に過ごした。


アレは、忘れる事も出来ない。

…1年生の夏頃、ボクを驚かせる為にのぼり棒に登って、

そこからジャンプしたたっちゃんは、

着地の衝撃で膝を顎にぶつけて、

前歯で下唇をほとんど咬みちぎってしまい、

血がいっぱい出たのだけれども、

目に涙を浮かべながらも泣くのを必死で我慢していた。

たっちゃんは、本当に強い男の子だった。


その場にいる、何も考えないバカな上級生がたっちゃんを見て、

「泣いてるやん」

と言った。

昔から、たっちゃんが人前で一度も泣いたことのない子だったのに、
そんな歴史を作った上級生の一言が、ボクは許せなくて、近くの砂場にあった石をブン投げた。
当たった上級生が額から血を出し泣いていた。
その血を見て、怖くなりボクもワンワン泣いた。
血だらけのたっちゃんは泣いていないのに、なんだかゴッチャゴッチャの光景だった。

駆けつけた先生達が

「あんたら、何があったん!?」

と叫びながら、たっちゃんを病院へ連れて行ったのがうっすら記憶にある。



3年生になると、
たっちゃんとクラスが分かれてしまって、休み時間は会えたけど授業中に一緒にいられない事がボクはとても寂しくて、

「いい事思いついた!」

と朝の登校の途中にたっちゃんと作戦を話した。
小学生が考えたその作戦は
「授業が始まって10分たったら『先生、オシッコに行っていいですか?』とお互い言おう!そんでトイレで待ち合わせしよう!」

というもの。
オシッコの日とウンコの日を交互に設けて、「ウンコ」と言って教室を出た日は、オシッコの日よりも長めにたっちゃんとトイレにいられたのだ。
そこで、何を話していたのかは覚えていないが、授業を抜け出して、2人で会っている事がすでにムチャクチャ楽しかったのだ。
一度、たっちゃんが「ウンコの日」なのに間違って
「オシッコに行ってきていいですか?」
と言って教室を出て来てしまった事があって、
その時は、たっちゃんが先に教室に帰らないといけなくて、すっごく寂しかったのを覚えている。







*文論5ノ2へつづく。

あるところにヨシ湖という大きな湖がありました。
そこでは、昔から恐竜の目撃談が多々。

恐竜の名を村の人々は
ヨッシーと名付け、恐竜の生き残り『ヨッシー伝説』が語り継がれているのです。
しかし、それに反し、
「何億年もの昔に絶滅した恐竜が現代に生き残っているはずがない。」という学者チームの声もあり、
ヨッシーの存在を信じてやまない人々との論争は尽きることがありません。


ある日、ヨシ湖からヨッシーを象った故障したラジコンが上がりました。
これにより、学者チームは「そらみたことか」と勢いを増し、
それでも村のおじいさんは「このラジコンとは別に、ヨッシーはいる。」
と言い張りました。
だけれども、だんだんヨッシーの存在が薄れているのは誰の目にも明らかでした。

ヨッシー否定派の数ある学者チームの中に一つ属する、オレンジ博士は、ヨッシーの存在を誰よりも理論立てて否定しました。

テレビなどに出演しては、ヨッシー存在派の意見の不透明な箇所を片っ端から上げていき、恐竜が現代で存在できない絶対的な理由を上げ、オレンジ博士はその名を世間に知らしめたのです。

それからというもの、ヨッシー目撃談を語っていた人々の居場所は徐々に狭くなり、学者チームは我がもの顔で、ヨシ湖のほとりを歩きました。


その活動により、巨額の富を手にしたオレンジ博士は「とどめ」と言わんばかりに、財産の全てを使い果たし最新鋭の探査機を積んだ探索100隻を用意しました。
あの大きなヨシ湖の中の全てを調べるという一大プロジェクトです。

とうとう長く続いた論争にも終止符を…。
人々は思いました。
湖に横一列に並んだ100隻の探索船を擁するオレンジ博士を率いる大探索チームは、意気揚々と検索を開始し、湖の彼方へ消えていきました。


そして案の定、ヨシ湖にヨッシーは存在しませんでした。
帰りの船の上で湖の隅々を調べた証拠データを一つにまとめたオレンジ博士は、「それでは、このデータを捨てましょう。」と言い、湖に投げ捨ててしまいました。
助手達はたいそう驚かされました。

帰航後、まもなく会見を聞いたオレンジ博士は、
「突然の高波により、データを湖に落としてしまいました。」
と言いました。
肩すかしをくらった記者団からは、
「晴天なり。今日はとくに静かな湖、高波など起こるはずがない。」
という声が上がりました。



「おっしゃる通りです。
ただ、恐竜がひょっこり顔をだしましてね。
それにより高波が起こったのです。」


記者団は唖然としました。

「皆様、今まですみませんでした。
私は間違っていました。
ヨッシーは存在しました。この目で確かに見たのです。」

…会見を終え、研究所へ帰る途中の車の中で、
オレンジ博士が助手に一言。


「ヨッシーは、存在した方が楽しいんだよ。」


オレンジ博士は最初から誰よりもヨッシーの存在を信じていたのです。
その存在を世間に信じ込ませる為にどうするべきか?そんな、オレンジ博士がうった大芝居により、ヨシ湖のヨッシーは今も生き残っているのです。



…たとえば、こんなウソ。あった方が楽しい。
本当を突き詰めて、その先に何も見いだせないくらいなら、だまし、だまされてそれでもいいのかもしれないと思う。
このウソで、誰かの胸が躍るなら、それも正解の一つとしよう。
うん、正解なんだよ。
未来を思って不安になったり、
昼間には「なんとかなるよ」と強がってみても、
誤魔化しきれないほどの不安に襲われる夜はありますか?
きっとあると思います。
ボクには、分かります。
それはボクも同じだからです。


じゃあ動きださなきゃいけないのだけれど、
踏み出す事はとても怖い事で、傷つく可能性を秘めている事で。
動くのが臆病になってしまう。
ボクは、今22歳。
ボクより年上の方、人生の先輩方にはこの言葉はぶつけられないけれど、同い年だとか年が下の方には、自分が、そして、自分のすごく近しい人が経験した事ぐらいは話せる。


傷つかずに生きる方法は1つだけあります。
それは、部屋から出ない事です。
四角い部屋の頑丈な壁に囲まれて、気が向いたら部屋の窓を少しだけ開いて、
そこから部屋の外にいる人に向かって、石っころを投げて優越感に浸っていれば安全です。
部屋のルールは自分で、自分の全てが正義なので傷つく事なんて勿論ありません。


だけど、その生き方にはもちろん落ち度がある。
部屋の中からでは、冒頭にあげた不安を取り除く事ができないという事。
部屋の中にいる間は、その不安がずっと抱え込む事になる。

その不安から目を背ける事が可能?
いや、無理だ。
なぜ?
不安から、無数の闇が生まれ引き込まれてしまう。
そこに「目を背けるな」なんて言われて腹が立ってしまうのは、目を背けてしまっている事を、本当は自分が一番わかっているからだ。言われなくても、もう皆分かっている。


ボク達は、遅かれ早かれその不安と対峙しなきゃいけない時が来る。
外に出なきゃいけないんだ。
じゃあ、外に出れば不安はなくなるか?
そうでもない。
不安というのは、次から次へと湧き上がってくる。
じゃあ、結局部屋の中にいたって変わらないじゃないか?
それも、そうでもない。


外には同じような不安を抱える人達がたくさんいて、その人たちは、皆、自分と一緒で臆病。
だから身を寄せ合い、酒でも呑んで、どうにかこうにか生きる術を皆で探し始める。
知恵を交換する。
「失敗したら、笑い飛ばしてやりましょう。」
という約束をする。
そうやって手を組んだら、その時に責任が生まれる。
自分一人ではないという責任。

責任は自分を少しだけ強くしてくれる。
自分が、
ペースが、
自分のルールが正義ではなくなるから。


男は以前、(男=たけるくん。以降、たけるくんと称す。)ボクらのバイトで、働いていて、
いろいろあって一度
「部屋にこもる」という選択をした。

バイトを離れる時に、職場で二人で話した。

止める事が正解なのかどうか、その時のボクには、分からなくて、

「戻っておいでや。」としか言えず、たけるくんとは結局それっきり。
今でも、あの時に止めておくべきだったのか、その正解はわからない。
もしかしたら、部屋にこもらずとも、どうにかなったかもしれない。


先日、梅田を歩いていたら
「ヨシくん!」と呼ばれ振り向くと作業着を着た、たけるくんがいた。
とても、スッキリした顔でとても、カッコ良かった。
部屋を抜け出した事は聞いていたが、その姿を確認したのは初めてで、とにかく良かった。
うん、本当に良かった。

再び、「外に出る」という選択をした臆病なたけるくんと、いつか酒を飲めたら、ボクは全力で部屋にこもっていた事をバカにするし、いくらでも笑いとばす。

「外に出て良かった」と思ってもらわないとね。

それが、ボクの責任。

まぁ、臆病者同士、傷を舐め合い生きましょう。

外に出たら、ボクが背負う。

だから、あなたも頑張って。