おばあさんは顔を固くこわばらせ1点を見つめ、女の人はまだ頭の上から

大声で正解を求めている。その直後、おばあさんが何かボソッといった。

すると「そーよ。それならいい。間違うなんてありえないから。

なんで変なこと言ったの?」今度はなんで変なことを言ったのかを

問い詰めだした。あまりにも声が大きくて、もうそこにいる誰もが

その人を見ながらひそひそしているのに、本人は全く気が付かない。

 

若いカップルの男の子は、お釣りがいくらか答えられないことを

あんなに怒るなんて、怖すぎでしょ。女の子もビックリした様子で、

あのおばあさんがかわいそう。と言っていた。

 

私は胸がドキドキした。そしてすぐ理解した。自分の母親が少しずつ

変っていく事に耐えられないのだ。

物忘れがだんだんに違う領域に進んできたのだろう。

私にも覚えがある。私の母は存命だが、今はホームのお世話になっている。

母に、母のままでいてほしい。何度もそう思い、思いが強すぎて言い合いもした。

ただただお互いが傷つくだけなのに。この女性は昔の私だ。

母を引き戻すことは出来ないと分かった時、優しくなれたと思う。

納得して受け入れるのには、かなり時間がかかるけど、早く乗り越えられるように

祈るしかない。