あれは大晦日の夜のこと。
実家に帰省するわけでもなく、かといって何をするでもなく
気付けば年中無休の居酒屋チェーンで寂しい年越し。
ワンセグで紅白を見ている隣の若い男性客二人
周囲に気を使うでもなく、大声で聞くに堪えない会話を続けている。
こんな馬鹿モノと同じ時間に、同じ場所で年越しを迎えようとしている自分に、自然とため息が出てしまった。
聞きたくもないが、聞こえてしまう
彼らの会話のほとんどが、自分達の親についてだ。
産まれてから成人になるまで育ててもらった事を忘れ、好き放題に親の悪口を言い合っている
くだらない会話が延々と続き、とうとう私も我慢の限界になった
この子達を注意しない店の態度にも腹がたってしまっていた
これならば家に帰って年越しのほうがよっぽどましだと思った。
会計の準備をしていると
『でもさ、、なんでお前、オヤジを殴ったんだよ?』
『ちょ~ムカついたからに決まってんじゃん。』
『でもさ、親殴っちゃ~ダメっしょ?』
そんな会話が聞こえてしまった。
急いで会計を済ませて家に帰ろう、、
彼らに説教をしそうな気持ちになっていた。
相手は酔っ払いの若い男子、それも二人、、
大晦日に怪我をすることもないだろう、、
良くみたら手の甲にタトゥーが、、
ドクロのジッポライターに、蹴られたら痛そうなブーツ、、
会話が続く
『オヤジがさ、エグザイル見ながらさ、「いいなぁ、踊ってるだけで金もらえるなんて」とか言い始めてさ、
楽しそうにしてる場面だけ見て勝手に楽そうだとか決めんなっつーの!
あの人達だって毎日一生懸命練習してさ、
何百、何千倍っていう競争を勝ち抜いて、死に物狂いでようやく掴んだ夢だろ?
チケットを買ってくれた人、遠いところから見に来てくれた人
CDとか買ってくれた人達に、自分らの最高のパフォーマンスを見せることが
最高の恩返しだと思って踊ってんじゃねーの?
そのステージに感動したり、勇気もらったりしてさ、また次の日からキツイ仕事も頑張ろうって思ったりするんじゃねーの?
そんな事も思わねーでさ、アイツ、なんて言ったと思う?
お前も髪の毛テキトーにイジッて、踊れば儲かるんじゃないのか?だとさ。。
自分のオヤジがこんなに人の気持ちの分からない奴かと思ったら
情けないし、腹も立つし
もうさ、気付いたら殴ってたのよ。。』
この会話を聞き、
さっきまで居心地の悪い場所だったのに、急に心が温かくなった。
理由はどうあれ、親に暴力はいけないが、親にも原因はある。
そんなことより、
あぁ、、外見だけで人を判断してはいけないなぁ、、、と痛感。。
しっかりした子じゃないか、、、
そう思ったら、無意識に私は彼にむかって
『えらいぞ!』と声をかけていた。
酒のチカラもあったのだろうか
彼に握手を求めていた。
そしてこの一言が原因で、
彼らに財布の中身を全て献上する事になるとは。。。
あした元旦だから病院あいてないのに・・・