僕は人を簡単には信用しない。特に、女性からの挨拶代わりの様な味がしなくなった好意の言葉は尚更だ。鵜呑みにした所で恥を掻くのが目に見えている。そこで、足踏みする位の気持ちなら踏み込まない方が健全だ。そもそも、恋愛に関しては慎重に慎重を重ねる。自分の気持ちが本当に正しいのか、多角的に自分自身を捉え、客観的に今置かれてる環境や精神状況などを考慮して自己分析を繰り返す。

 その根底にあるのは

【誰の事も、自分の事も傷つけたくない】

そんな幼稚で下らない考えから起因してるのかも知れない。

 初恋は、保育園の時だった。と言っても好きな女の子が複数いたので、これを恋にカウントしても良いのかどうかも微妙なところではある。そうなると、一人の女の子を好きになったのは小学3年生の夏の始まり。この恋を自分の初恋と認定しよう。

 団地っ子だった僕は、学校の放課後には走って家に帰ってランドセルを玄関に放り込む。玄関の鍵も閉めずに、そのまま近所の空き地に行き友達が集まるのを待っていた。そこでは野球やメンコなどの昭和の味わい深い遊びなどのオリンピックが毎日の様に繰り広げられていた。汗だくになり時折ケンカになったり、ガキ大将は圧倒的なカリスマ性を生まれ持っていたと思える。そこでの自分の立ち位置は、ガキ大将ではないが、一目置かれる存在だったと思って頂いて構わない。

 そんな夏の始まりの一学期も終わりに差し掛かった夕方に、彼女は現れた。その日は、学校の校庭でドッチボールに夢中になってたら
担任の先生に『いい加減に帰りなさい』と注意さらたのだ。その先生の後ろに見慣れない親子が立っていた。
『すいません。今から職員室にご案内します。』と担任の先生とその親子が校内に消えて行った。

それが、初めての出会いだった。