『デビュー』
私は五十過ぎになって、
真の才能の開花を迎えた。
十代からの作品が
五十代以降に
少しずつ
真の完成に達したのだ。
若い頃の作品は
真の完成に至っても、
新人賞には入選しなかった。
私は幻聴の嵐の鎮まる隙に、
自分のやりたいように、
好きなように生きてきた。
私は54にして、
老人のように
死を覚悟している。
死の覚悟と言ったって、
自殺なんて
愚かしい真似をしようと
思う訳ではない。
私には若い頃に
作家デビューするような可能性は
なかったろうと思う。
著名人の世界とは
前世で沢山
善行や徳を積んだ人達への
御褒美の世界で
そうなる宿命にある人達の世界で
あるらしい。
お金で例えるなら、
大富豪が
有り金の全てを寄付するような
徳である。
天国とは
普通に信仰心がある程度の
信仰では入れないらしい。
貧乏人がなけなしの千円札を
困っている人に恵むような善行は、
感動的ながら、
天国へのパスポートを得るような
善行ではないらしい。